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第30話 おねだり
次のバイトの時、和紗が擦り寄ってきた。
「リョウスケ君……この間……ありがとね。体をはって助けてくれて……。」
和紗はしおらしく言った。
「ええ、その件に関しては、もういいんで。まず、早く、紹介してください、あの画像の子を……!」
俺は身を乗り出した。
「あ、うん。あの子ね、今度来る日にちが分かったら、教えるから。それでさ、もう一つ相談があるんだけど……。」
紹介の前に相談なんて、釣り合ってないんですけど……。
「いや、俺、リョウスケ君とキスして、なんか、男もアリなんだな……って、思ったんだ……。」
は?なんだって?
「なかなか、女の子相手じゃ、あんなキスしてもらえないじゃん……。俺……意外と強引にされるの……嫌いじゃないんだなって……。」
和紗の目が真剣だ。
あぶない。
「いや、それ、あんま深く追求しない方がいいですよ……。絶対女の子の方がいいですって……。」
「まあ、その……そうかもしれないけど……一度は体験してもいいかなって……。それでダメならね、足を洗うよ。」
「な、何を体験したいんですか……?」
「男同士のセックスを……。」
「まさか、俺に相談って……。」
「リョウスケ君なら、その気になってくれるかなって……。」
「いや!ないです。他を当たってください。」
「他に頼めるわけないじゃん!頼むよ!一回だけ!」
「なんで俺が和紗さんのそこまで面倒見なきゃいけないんですか!」
「じゃあさ、今度合コン開いてあげる!気になる子がいたら、デートに車出してあげるから!」
俺は考えた。
合コン……憧れる……。
その後も、ちょっとした遠出デートを和紗に仕切ってもらうのはことが進みやすいかもしれない……。
でもちょっと待て。
その前に、和紗を俺が抱かなきゃいけないの、おかしくない?
なんでこんなに女の子に至るまでが近くて遠いの?
「……ちょっと、提案なんですけど……。」
「何?」
「俺も経験ないんで、ここはまず、おもちゃを使うってどうですか?それがよければ、一人でも楽しめますし……。」
「そ、そうだね!たしかに……。」
「ちょっと、俺も調べるんで、あとで連絡しますね。」
これならいいだろう。
和紗がおもちゃで満足すれば俺はいらない。
初体験を盛り上げるだけでいい。
合コン……遠出デート……
大学に入って良かった……
心底そう思った。
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