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第35話 合コン

それから数日後、俺はそわそわしながら飲み屋のテーブルにいた。 今から例の合コンだ。 大変間が悪いことに、ハルマへの本気を確信した直後に和紗からメッセージが来て、日にちが決まってしまったのだ。 和紗の手間を考えたら、無下には断れない。 人として。 今日は3対3で、女の子は、レナちゃん、アズミちゃん、マリサちゃんだ。 和紗のサークル友達の三人で、俺の狙いの子はマリサちゃんだ。 レナちゃんには好きな男子がいて、そいつを呼ぶから後一人(俺)呼んで三人する……というていだ。 その男子は、同じ大学の2年生らしい。 誰かが入ってきたので入り口を見ると、そこに柏木先輩がいた。 「あ、あれ?何でこんなとこに?」 「……お前こそ……。」 まあ、飲み屋でばったり……はなくはないか。 にしても、アレ以来会うのは初めてだ。 もう、響さん公認だから恥ずかしさは通り越してるけど。 「稲田で予約してるんですが。」 先輩のセリフを聞いて、心臓が止まった。 「……まさか、今日、合コンですか……?」 「……そういうことか……。」 三人目は、柏木先輩だった。 「響さんがいるのに何で……?」 「……可愛い後輩のために頭数で来てくれって言われたんだよ……。」 マジか。 先輩、意外といい奴だった。 「お前こそ、何なんだよ。相変わらずハルマを簡単に裏切るな……。」 お前が言うな、とも思うがお互いさまだ。 「タイミングが悪かったんですよ……。ちなみに、和紗さんです……例の……男に目覚めそうなのは……。」 「……無茶苦茶だな……。」 本当にそうだ。 女の子に申し訳ない。 まもなくして、和紗と女の子たちが来た。 女の子たちはみんな可愛かった。 韓国風な化粧が流行りなせいか、みんな同じ顔に見えるけど……。 とりあえず飲み物を頼む。 和紗が仕切って、盛り上げ調子で助かる。 レナちゃんは当然、柏木先輩の正面をキープだ。 先輩も、なんだかんだで笑顔を見せている。 乾杯をして、自己紹介を簡単にする。 「リョウスケ君はバイトの後輩だけど、仕事もすぐに覚えたし、堂々としてるよね。俺は助けられてばかりだよ。」 和紗が立ててくれる。 「それは和紗さんの教えるのがうまいからですよ。」 と、ついつい謙遜する。 実際、和紗は面倒見がよく、いい先輩だった。 「リョウスケと湊は初対面だよね?」 「あ、いや、実は高校の先輩です。」 「え?ホントに?」 まあ、それ以上の関係の方が深いけども。 そういえば、先輩が女の子と一緒にいるのを初めて見る。 黙ってればどの子ともお似合いだ。 和紗がうまく話を回して、それなりに盛り上がる。 マリサちゃんが、俺の時計に気づいた。 「ねえ、リョウスケ君!その時計、ジョルジデザインじゃない?」 「え?よく知ってるね!」 「私のお母さんが好きで、ニューモデルが日本で出たって言ってたの!」 「そうなんだ。友達のいとこなんだ。」 「いとこ?!マジで?!そんな近い関係なの?!」 ジョルジは実は本当にすごい人なんだな……。 まだ実感ないけど。 そして身を乗り出したマリサちゃんのおっぱいがまぶしい。 「俺も会わせてもらったけど、面白い人だったよ。」 「いいなー!お母さん、フランス行ったとき、わざわざ個展に行って、絵を買ってきたんだよ。サインもらえないかな??」 「大丈夫じゃないかな。ちょっと聞いてみるね。」 俺はすぐにジョルジに連絡した。 サインも構わないし、なんならアトリエに遊びに来て、とのことだった。 「ホントに?!嘘みたい!ありがとう!」 マリサちゃんは感激した。 とんとん拍子で話が進み、今度和紗の車で行くことになった。 皮肉なことに、ハルマのくれた時計で女の子と仲良くなってしまった。

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