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第39話 帰宅

和紗が風呂場から出てきて、俺は挨拶もそこそこに帰宅した。 和紗は俺と話したがったが、もう無理だ。 居酒屋バイトは早めにやめよう……。 アパートに着くと、ハルマが起きていた。 「おかえり。」 「ただいま……。」 「……どうしたの?顔色悪いけど……?」 「ちょっと……飲み過ぎちゃって……。臭うからシャワー浴びるね……。」 そそくさとシャワーを浴びた。 いや、ホント真面目に生きよう。 このままじゃダメだ。 ハルマにバレるとか、そんな問題じゃなくて、俺が人として……。 リビングに戻ると、ハルマはソファでスマホを見ている。 「あ、ジョルジからメッセージ来たよ。今度、リョウスケとお友達がアトリエに来るんだよね?」 「ああ、そうなんだよ。ごめん、連絡しなくて。」 「ううん、いいよ。飲み会中だったんでしょ?その日、例の雇ってくれるカメラマンの葵さんも来るんだ。面接も兼ねて会いたいって。俺も行くね。」 うん? ハルマも……? ヤバい、合コンがバレてしまう! むしろ合コンの方が健全なのに! 和紗と口裏を合わせなきゃいけないけど……連絡しづらいな……。 一難去ってまた一難だ……。 「よろしくお願いします……。」 「リョウスケ……大丈夫?具合悪いの?」 「いや、大丈夫だよ。うん。」 俺はハルマに抱きついてすりすりした。 「あはは。どうしたの今日は。」 「……甘えたい気分……。」 ハルマがよしよしして、抱きしめてくれた。 ♢♢♢ 翌日、バイトがあった。 出勤すると、ロッカーに和紗がいた。 「リョウスケ君……昨日……ありがとうっていうか、ごめんっていうか……。」 和紗がおどおどして言う。 「こちらこそ……。あの……忘れてください……。」 俺はさっさと準備をしようとした。 「リョ、リョウスケ君っ!」 和紗が急に抱きついてきた。 「ちょっ!やめてください!」 「お願い!話聞いて!あのさ、俺と付き合ってくれない?本気で!」 「いやいや!無理です!」 「女の子と付き合ってくれていいからさ!男部門は俺で……!」 男部門って何?! それがあったとして、もうハルマがいるよ! 「嫌です!他を当たってください!」 「じゃ、じゃあ!セフレでいいから!」 「嫌です!」 「お金払うから!」 「それもう話違うし!」 「じゃあ聞くけどさ!俺のこの男に抱かれたい欲求はどこに行けば満たされるの?!」 「……そういう人が、集う場所……?」 「でも!怖いじゃん!誰でもいいわけじゃないんだからさ……!」 ……相手が男ならそうかもしれない。 俺はたまたま最初から恋人がいたけど……。 「ホント……たまにでいいから……。」 性欲が制御できない気持ちはわかる。 まあ……和紗は彼女いるから、普通の性欲はいいんだろうけど、それじゃ男に抱かれたい欲求の解消にはほど遠い……。 目覚めたら目覚めたでうまくいかないものだ……。 「……その時たまたま都合が合えば……ですよ……。」 「リョウスケ君……!ありがとう!」 和紗がさらにひしっと抱きついてくる。 「あの……早速ちょっとお願いいいですか?」 「何?」 「近々、また柏木先輩とも飲みたいんですけど……。俺……先輩ともキスしちゃったし、先輩もその気があるなら、もう巻き込んじゃいません?」 悪魔的なひらめきが来てしまった。 「……ああ……意外だった……。なんか普段は優しくて爽やかだから、あんな場面に居合わせるなんて……。」 「嫌なら辞めればいいし!先輩も、興味あるならそれはそれで。」 俺ばかりに押し付けて……。 先輩にも責任を担ってもらおうじゃないか……。

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