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第6話
学校に迎えが来るのはいつものことだ。
息子に自由などない。
大学生になってもそれは変わらなかった。
勉強に打ち込み、同時に父親の仕事について学ばせられていた。
父親は仕事に関しても容赦なかった。
いくつか持っている表向きの仕事で従業員と同じように息子を扱った。
大学生のバイトとして働かさせられいた。
もちろん。
誰もが息子が何なのかを知っていて、息子は例えバイトであっても、誰よりも優秀であることを父親に求められていた。
父親と一緒にはたらくことなどない。
一番下のバイトだから。
でも。
評価だけは父親に届くのだ。
バイトの立場から完璧にやり遂げ、尚且つ、その立場から見えることを父親に報告させられる。
何が分かったのか、どうしたら良いのか。
気を抜くことなど許されなかった。
学校から父親の会社の一つに働きにいく。
それが終わると家へ。
息子はいつも荷物のように送り届けられる。
もちろん、貴重品だ。
支配者のモノなのだから。
必要以上に他人と触れ合うこともない。
息子は長く父親に会ってない。
こんなに長く帰って来ないことは初めてだった。
仕事先から家に送り届けられる車の中で、息子は流石にぐったりした。
でも。
家に帰ったなら大学のレポートもしなければならないし、何より疼く身体を自分で慰めないといけない。
父親を求める身体を、少しでも収めないと。
父親のことを考えるだけで、腹の奥が熱くなり、後ろの穴が疼いた。
口の中を舌で無意識に舐めてしまう。
父親のモノで口の中を擦って欲しい。
後しろもたっぷり可愛がって欲しい。
前を縛って出せないようにして犯されたかった。
乱暴にめちゃくちゃに、突き上げて欲しかった。
後部座席で、思わずズボンの中に手を入れそうになり、慌てて止める
今はダメだ。
完璧な跡継ぎでなければならない。
自分を慰めるのは、1人だけの部屋でないと。
車が止まり、ドアをあけられる。
父親の部下達が息子の送迎はしているのだ。
護衛でもあり、監視でもある。
彼らは父親の目でもあるのだ。
「お疲れですか?」
明るく声をかけられた。
息子は驚く。
そんな風に話しかけられたことがなかったからだ。
ドアを開けた部下に目をやった。
今まで息子もそんなことはした事がなかった。
息子にとって父親の部下は父親の道具で、部下達にとっても息子は跡継ぎではあっても、父親の道具だったからだ。
息子も部下達も、父親しか見て来なかった。
送迎を任せられる部下達は、父親が息子に何をしているのかを知っている。
父親は何度もこの車の中で息子を犯したからだ。
車は運転席から後部座席が見えなくされているが、声を殺すことも知らない息子が何をされているのかは、部下達にだって分かっている。
だが。
父親は絶対だ。
秘密は漏れることはない。
なにも無かった顔をして、息子には丁寧な態度で、必要以上に関わることなく部下達は接する。
息子は支配者だけのモノだからだ。
丁寧に、でも。
支配者のものだ。
不用意に触れてはいけない。
だから、ほとんど必要以外の会話を交わしたこともなかったのに。
「顔色が良くないですね」
さらに息子にその部下は言う。
こんなにニコニコ話しかけられたのは初めてだった。
まだ若い、20代半ばの男だった。
それも珍しい。
今まで家に出入りしたり、息子や母親の送迎をするのはそれなりの年齢の男たちだった。
秘密を守り信用ができる男達。
男たちは、父親のものである美しい息子や、美しい母親をまともに見ようともしなかった。
父親のモノを見るすることさえ恐れたからだ。
でも。
その男はあっけらかんと息子を賞賛するような目で見ていた。
息子に向かってそんな目を向けた者はいなかった。
誰もが息子があの家の息子であることを知っていたから。
その美しさよりも、父親への恐ろしさが勝っていたから。
男は父親の仕事の部下であることに相応しく、暴力の匂いがした。
が、でも、突き抜けたような明るさがあって、そういう人間を息子は出会ったことが無かった。
父親の部下で、家に出入りする者達は、父親の闇に一番慣れたもの達だったから。
汚れ仕事も辞さない、選りすぐりの部下達には、こんな明るさはなかった。
目を見開いた息子に、その男は微笑みかけさえした。
そんな風に笑いかけられたことが無くて、息子は混乱した。
だけど何とか混乱をおさめて、車を降りようとした。
思わずよろけてしまったのは、本当に偶然だった。
「危ない!!」
男に抱きとめられた。
父親以外の肉体に抱きしめられたのは生まれて初めてだった。
息子には母親が抱きしめてくれた記憶さえないのだ。
飢えきった身体は、父親じゃない肉体なのに、ビクンと反応してしまう。
ただ、抱きとめられただけなのに。
震えたことに、気付かれたのは間違いない。
息子の身体をゆっくり男が離したからだ。
その目は。
息子の顔から一度も離れなかった
そんなことをした男は今まで1人もいなかった。
「気を付けないと」
耳元で囁かれ、真っ赤になった。
息子は部下を突き飛ばすと、走って屋敷に入る。
そして、庭の父親の車に気付く。
父親が帰ってきていた。
息子はその嬉しさと、今あったことに動揺する。
混乱して。
でも。
父親に会いたくて。
屋敷の中へ走っていく。
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