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第11話
父親は目が覚めるといなかった。
あの男が父親は急に仕事が入ってどこかへ向かったと教えてくれた。
そして、自分が息子をこの土地の観光に付き合うことを父親に命じられたと言った。
息子はガッカリした。
父親との旅行を楽しみにしていたからだ。
父親とのセックスは息子に与えられた唯一の娯楽だが、でも、父親とそうじゃないことで過ごすことは滅多にないからこそ、それがとても楽しみだったのだ。
セックスを教え込まれる前の、父親がたまに構ってくれたこと。
優しくしてくれたこと。
それらは甘い記憶として、息子の中にあるし、セックスをされるようになっても、たまに父親と過ごすセックス抜きの一時は貴重な時間だった。
ただ優しく、セックス抜きでも父親が受け入れてくれる、その甘さ。
その甘さを大切にしていることが、父親の支配を受け入れることに繋がっていることが息子には分からない。
そう、父親はちゃんと手順を踏んで支配している。
まずは優しさを求めさせ、与え、そして、それをセックスと混同させるように。
でも。
息子はそれが分からない。
父親を求める心とセックスが無理やり結びつけられたことも。
セックスで脳を壊され、更に父親に支配されていることも。
支配されきっていることも。
快感も孤独感も何もかもが、父親への支配のための道具なのだ。
そもそも、痛い痛いと泣きながら幼い身体がそれでも後ろを貫かれることを求めたのは、父親にそれでも愛されたいからだった。
父親に優しくして貰えるから耐えて。
酷くされた後、優しくされるのがご褒美で。
行為が苦しければ苦しいほど、それは父親にやさしくしてもらえることであることを【学習】し、苦しくてもそれを求め始める。
父親しか優しくしてくれなかったから。
優しくされたくて、酷い行為に耐える。
そしてやがてそこで快楽を得るようになる。
貫かれる痛みに甘さが混じり始めた時、痛みに耐えるためにその快楽を集めた時だったかもしれない。
でもそれは確かに快楽で。
それを父親は息子に父親が与えた快楽だと思わせた。
気持ちよいね
良かったね
そう囁いて。
息子は言う
お父さん気持ちいい
と
後ろの穴で感じ始めた時、父親との行為が苦しいだけで無くなった時、父親は巧妙に息子の認知を書き換えていた。
父親の為に耐えるためにしていたこの行為を、息子が望んでしていることにしてしまう。
そして、幼い脳に快楽を叩き込む。
息子は苦痛ではなくなったからこそ快楽にしがみつく。
父親を愛するから耐えていた行為が
父親から与えられる悦びにされていく。
父親は快楽を与えて与えて。
狂わせて。
息子に言わせる。
気持ちいいです
もっと犯してください
息子はそれをいつしか叫ばせられている。
まるでそれをされることを自分から願ったかのように。
そして、それはそうなる。
息子はいつの間にか父親に犯されることを願っている。
最初からそれを求めていたかのように。
少なくとも、もう息子の中ではそうなってしまっている。
泣き耐え、それでも愛されたくて、あの行為を受け入れたことが抜け落ち、快楽を父親に求め、それを与えれることを喜びとして記憶している。
それが支配だった。
父親は息子の身体をもちろん快楽の道具としても楽しんでいるが、それ以上に支配を楽しんでいる。
息子は差し出せるものを全て父親に差し出している。
犯されて悦び、父親の命令に従うことを悦び。
父親をひたすら恋慕う。
今、父親において行かれた幼い子供に戻って、息子は落ち込んでいた。
寂しくて悲しくて仕方ない。
息子には自分を産んだ女はいても、母親はいなかった。
最初から父親しかいなかったから。
「オレが案内しますよ」
男が明るく言った。
「お前が?」
息子は初めて会話をするために男に言葉をかけた。
父親の部下と「会話」をしたことさえ無かったのだ。
「ええ。楽しんで来いとボスから言われてます」
男の声は明るく、その言葉に嘘はなさそうだった。
だけど。
あの父親がそんなことを言うだろうか。
息子は自分を楽しませるためのもので、息子が楽しむことを望むだろうか。
息子はそう思ったが、すぐ考え直した。
父親がそう言ったなら。
従うだけだ。
息子は覚えていない。
昨夜父親に犯された身体の後始末をしたのは誰かなのか。
この目の前の男の指が、初めて父親以外で息子の中に入って精液を掻き出していたことも。
風呂で全身を優しく洗われたことも。
覚えていないから、よく知らない、父親が与えた護衛兼見張を、観光案内人として、男が自分と行動することを息子は受け入れた。
父親からの命令として。
「楽しみましょう」
男は笑った
なんでお前も楽しむのだ、と息子は思った。
息子を楽しませることを命じられたのだろうに。
本当に父親の部下とは思えない男だった。
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