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第7話

 ジャケットのつぎはダンガリーシャツをはだけさせて、朋樹自身、眼鏡をむしり取る。  理人のほうも、すでに(たが)が外れかかっているふうだ。カットソーをめくりあげるなり乳首をついばむ。ちっぽけで、乳暈(にゅううん)になかば埋もれている粒を舌で掘り起こすさまが雄弁に物語る。  一刻も早くおまえを摂取しないと電池切れでくたばってしまうかもしれない──と。 「がっついて、スケベ……」 「ケダモノっぽい俺も悪くないだろ? なあ、俺を想ってを指で慰めたよな」  双丘の狭間を撫で下ろしながら訊くのは、あざとい。指がたどる軌跡に沿って火が点る。最初のうちは燭蠟(ろうそく)の火、並にすぎなかったものが、輪郭を写し取るように指が肌を這い回るにつれて燃料を補給されたかのごとく、ごうごうと燃え盛る。  チノパンが蹴り脱がされた。右足のぶんは裏返し、左足のぶんはとぐろを巻く。ひと呼吸おいてボクサーブリーフが後につづく。 「ぁ、あ……っ!」 「タンク一杯に溜めてたな。粘っこいのが、もうしみ出した」  小手調べ程度にペニスをしごいたうえで、これ見よがしに指を舐める。  朋樹は余裕をかます理人を艶冶な目つきで()め据えておいて、ジーンズの中心に掌をかぶせて返した。厚ぼったい生地を通してさえ熱が伝わってくるようなそこは、早く解放してくれ、と言いたげにファスナーを押しあげていた。  山なりにせり出しているせいでファスナーを下げるのに、もたつく。ようやく摑み出した陽根は、雄叫びをあげるようにそそり立つ。  おとなしげな見た目を判断基準にした場合、朋樹は性的に淡白なグループに振り分けられるだろう。もちろん誰しも別の一面がある。  イチモツをやわやわとこすりながら舌なめずりするさまは、下肢を開き気味にしたしどけない姿も相まって、すこぶるつきに婀娜(あだ)っぽい。そう、朋樹を淫らにする権利を持つのは、地球上で理人ただひとり。  雄身が脈打つたび、内奥が切なげに、また誘いかけるようにうねる。逸る気持ちを抑えて顔を伏せていけば、舌が先端を捉える寸前で仰のかされた。 「ヤンチャ小僧め。おとなしく食われておけ」 「おれはスナック菓子じゃありません。腹ペコなら冷蔵庫を漁って何かつまめば」  ボクサーブリーフを拾いあげて、キスでなだめてもらう。捨て猫の気分を嫌というほど味わったあとなだけに多少のわがままは許される、と思う。  ふっくらと煮えた蕗も、絶妙の酢加減のぬたも、食べ時を逃しては台無しだ。  だがの前では、三ツ星レストランの料理でさえ色あせる。現在(いま)はただ、存分に貪り合いたい。たとえ、この瞬間に山津波が発生して山荘が呑まれたとしても、それでも朋樹は土砂をかき分けて這い出すより、奥の奥まで刺し貫かれたまま運命を天に任せるほうを選ぶ。

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