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第10話

 腰を揺すりあげて急かした。幹が狭間の線に沿う形にセットされると、花びらが尚更むずかるように皺んでは開く。それに応えて、わずかに(いただき)がめり込んだ。  丹念にほぐしてあるとはいえ本来にはできていない玉門の構造上、うがたれる瞬間には多かれ少なかれ痛みをともなう。圧迫感が強まるにしたがって躰が自然とずりあがり、優しく引き戻されたところで、カリが改めてギャザーを解き伸ばしにかかる。 「ん、ぅ、ああ、あ……っ!」 「やっぱりブランクがあるせいだな、きつきつだ。前戯が足りないなら足りないと正直に言ってくれ」  と、後孔をそっと撫でてくる理人にしても、くくり罠さながら、へし折らんばかりに収縮したせいで呻き声を洩らす。  朋樹は、へこんだ口角をついばんであげた。それから花芯がほとんど真上を向くまで膝をたたむと、無理やり迎えにいった。  ニッチもサッチもいかなかったのが怒張の量感になじみはじめると俄然、弾みがつく。そう、硬い岩盤を掘削(くっさく)するように、力強く遡る雄身の前に、花筒が道をあけたさまを思わせて。 「ぁ、ああ、おっきいのが暴れてる……」 「そうだな、八割がた、はい……った」  うなずき返してきて、いたわる(てい)で乳首を食み、突き入れる角度に微調整をほどこす。  とはいえ理人が留守にしていた日数ぶん間隔があいたのを反映して、番い方じたい微妙にぎこちない。異物感を訴えて肉の環が狭まるのをなだめすかし、ゆるゆると律動が刻まれるなかで奇々怪々な現象が起きた。  紙幣を明かりに(かざ)せば透かしが浮かびあがるのと、ある意味、共通点がある。理人の顔と間宮のそれが、版を重ねたようにダブって見えたのだ。   朋樹は目をしばたたいた。確かに裸眼だと、階段を駆け下りるのは危険きわまりないド近眼だ。だからといって、錯視を起こした根拠には乏しい。  もしも……いや、たとえ駿河湾の海底にテーマパークが建設される時代が訪れたとしてもありえない話だが、間宮とセックスする羽目に陥ったら百パーセント、憤死する。でないと至純の愛を(けが)した罪は到底償いきれない。貞節の誓いを破る、イコール万死に値するのだから。  だいたい、よりによって理人と愛し合っているさなかに間宮の顔がちらついた時点で、冒瀆も いいところだ。 「こら、ぼんやりして。に集中しろ」  切っ先が(さね)をこすりあげていくと雑念は消し飛ぶ。世界が理人一色に染まる。 「あっ、しゅう、集中してるってば……あ……っ!」 「に、しては、イマイチ乗りが悪いぞ、ん?」

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