17 / 28

第17話 確認事項

「傷は……ねぇようだな」 「ん、」 「どこ触られた」 「んっ、乳首、引っ張られ、んぁっ」  乳首を引っ張られたって言い終わる前に、藤也(トウヤ)さんに引っ張られてビリビリした。 (気持ちいい……)  同じことをされているのに、藤也(トウヤ)さんに引っ張られているって思うだけで気持ちよくなった。 「ん、ぁん、んっ、」  引っ張ったあと、いつもみたいにペロペロ舐められた。右を舐めて、左側はチュウッて吸ってから離れた。 「他はどこ触られた?」 「足、掴まれて、んっ、」  足を掴まれたって言ったら、両足をグーって持ち上げられた。気持ち悪かった手と同じように掴まれているのに、藤也(トウヤ)さんの手だから全然気持ち悪くない。 「それから?」 「お尻、指、入れて、ぁぅ!」  今度はお尻に藤也(トウヤ)さんの指が入ってきた。ジェルは使っていないけど、ヌルヌルしているから太い指も簡単に入る。  お風呂に入っているとき、泡で体を洗ったあとヌルヌルするのでお尻の中をたくさん洗った。そのヌルヌルを、グーッて奥に伸ばすみたいに太くて長い指が動いている。ヌプヌプ音がして、たまにクチュクチュって音もした。 「痛くねぇか?」 「……っ、痛く、ない……っ」 「突っ込まれたのは指だけか?」 「指、なかを、ぐりぐり、って、指で、ふぁっ!」  ビリビリするところを指でググッて押されて、体がビクンって跳ねた。捕まっていたときは気持ちが悪いだけだったのに、藤也(トウヤ)さんが触ったらビリビリが気持ちよくて何度も震えてしまう。 「指、気持ちい、気持ちぃい……」  気持ちがよくて、頭がボーッとしてきた。 (……あれ? 俺の足、ゆらゆらしてる)  そっか、藤也(トウヤ)さんの肩に足が乗っかっているからだ。だから体がビクッてすると足も一緒にビクッてなるのが見える。練習のときに自分の足が揺れているのを見るのは初めてだ。 (……仰向けで寝てるからだ)  藤也(トウヤ)さんと練習するときは、いつもうつ伏せだった。そうしてお尻を高く上げて藤也(トウヤ)さんによく見えるようにする。それなのに、いまは仰向けのままだ。 「一応、ギリで間に合ったってことか。いや、指だけでも突っ込んだってのは不愉快だな。潰しはしたが、指落としとけって言っとくか」 「ふぁ、ぁ、ぁ、」 「指が二、三本なくても、穴さえありゃあ売れるだろうしな」 「ぁ、ぁ、ぁんっ、」 「何にしても、つけといて正解だったな」 「んっ!」  お尻の中をたくさんいじってた指がチュポッて抜けた。気持ちよかったのに何でって目を開けたら、肩に乗っていた足も下ろされた。見上げた藤也(トウヤ)さんは怒っているような顔をしている。 (やっぱり、怒ってたんだ)  置いて行かれなかったし体も頭も洗ってくれたけど、だからって怒っていないわけじゃない。 「ト、ヤさん、」  気持ちよくてフワフワしていた体がギュッと強張った。 (どうしよう、怒ってる。怒られる、嫌われる)  嫌われたら、どうしよう。怖い、嫌われるのが怖い。嫌われたくない、嫌だ、嫌いにならないで。お願いだから、俺を嫌いにならないで。 「泣くんじゃねぇ。おまえを嫌いになんてならねぇから安心しろ」 「……ほん、と、に?」 「この先もおまえを嫌いになることはねぇよ」 「……でも、俺、勝手に、」 「それに関しちゃ、あとでたっぷりお仕置きするからいい」 「おし、おき、」 「大丈夫だ、痛いやつじゃねぇ」  そう言って藤也(トウヤ)さんが笑った。 「おまえの考えてることは大体予想がつく。怒ってもねぇし嫌ったりしねぇから安心しろ」 「ぁ」  おでこにキスされた。ほっぺたと、鼻と、口にもしてくれる。俺の右手を握って、五本指全部にキスしてくれた。それから、手首に巻いていたピンク色のアクセサリーにもチュッてした。 「これに高性能のGPSを付けてある。万が一を考えて用意したんだが、役に立ったな」 「じーぴー……?」 「どこにいても、俺にはおまえの居場所がわかるってことだ」 「俺の、居場所」  藤也(トウヤ)さんがチュッてしたアクセサリーを見た。綺麗なピンク色の紐に銀色の玉みたいなのが付いている。よくわからないけど、これで俺の居場所がわかるってことなんだろうか。 「三玄茶屋(さんげんちゃや)の奴らが売人を探してるって聞いて、念のため用意したんだが正解だったな。それに俺もそこそこ顔が知られているからな。俺関連での万が一も考えられなくはなかった」  そうだ、藤也(トウヤ)さんはテレビに出ていた。テレビに出る人は有名人だって、俺だって知っている。 「藤也(トウヤ)さん、テレビ、出てた」 「あぁ、あれを見たのか。滅多に出ることはねぇんだけどな。テレビなんかに出てたせいで、おまえが部屋から出たことに気づくのが遅くなった。ったく、生放送ってのはろくでもねぇ」  部屋から出たって言葉にドキッとした。 「そういや、どうして急に部屋を出た?」  怒っていないって言われたけど、勝手に出たのは悪いことだ。そう思ったら体がまた強張った。でも、聞かれたことに答えないのはもっと悪い。 「……雑誌、を、テレビで見た、雑誌、買おうと思って」 「雑誌? ……経済誌のことか?」  声が出なくて小さく頷いた。 「なんでまた、経済誌なんか……」 「…………写真、載ってたから」 「写真?」 「……藤也(トウヤ)さんの、写真。テレビで見て、かっこよくて、ほしく、なって、」  藤也(トウヤ)さんの顔が、また怖くなった。 「写真、あったら、……いつでも顔、見れるって思って」 「ハァァァ」 「……っ」  どうしよう、すごく大きなため息をついている。また怒らせてしまった。怖くなった俺はぎゅうっと目を瞑った。

ともだちにシェアしよう!