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第17話 確認事項
「傷は……ねぇようだな」
「ん、」
「どこ触られた」
「んっ、乳首、引っ張られ、んぁっ」
乳首を引っ張られたって言い終わる前に、藤也 さんに引っ張られてビリビリした。
(気持ちいい……)
同じことをされているのに、藤也 さんに引っ張られているって思うだけで気持ちよくなった。
「ん、ぁん、んっ、」
引っ張ったあと、いつもみたいにペロペロ舐められた。右を舐めて、左側はチュウッて吸ってから離れた。
「他はどこ触られた?」
「足、掴まれて、んっ、」
足を掴まれたって言ったら、両足をグーって持ち上げられた。気持ち悪かった手と同じように掴まれているのに、藤也 さんの手だから全然気持ち悪くない。
「それから?」
「お尻、指、入れて、ぁぅ!」
今度はお尻に藤也 さんの指が入ってきた。ジェルは使っていないけど、ヌルヌルしているから太い指も簡単に入る。
お風呂に入っているとき、泡で体を洗ったあとヌルヌルするのでお尻の中をたくさん洗った。そのヌルヌルを、グーッて奥に伸ばすみたいに太くて長い指が動いている。ヌプヌプ音がして、たまにクチュクチュって音もした。
「痛くねぇか?」
「……っ、痛く、ない……っ」
「突っ込まれたのは指だけか?」
「指、なかを、ぐりぐり、って、指で、ふぁっ!」
ビリビリするところを指でググッて押されて、体がビクンって跳ねた。捕まっていたときは気持ちが悪いだけだったのに、藤也 さんが触ったらビリビリが気持ちよくて何度も震えてしまう。
「指、気持ちい、気持ちぃい……」
気持ちがよくて、頭がボーッとしてきた。
(……あれ? 俺の足、ゆらゆらしてる)
そっか、藤也 さんの肩に足が乗っかっているからだ。だから体がビクッてすると足も一緒にビクッてなるのが見える。練習のときに自分の足が揺れているのを見るのは初めてだ。
(……仰向けで寝てるからだ)
藤也 さんと練習するときは、いつもうつ伏せだった。そうしてお尻を高く上げて藤也 さんによく見えるようにする。それなのに、いまは仰向けのままだ。
「一応、ギリで間に合ったってことか。いや、指だけでも突っ込んだってのは不愉快だな。潰しはしたが、指落としとけって言っとくか」
「ふぁ、ぁ、ぁ、」
「指が二、三本なくても、穴さえありゃあ売れるだろうしな」
「ぁ、ぁ、ぁんっ、」
「何にしても、つけといて正解だったな」
「んっ!」
お尻の中をたくさんいじってた指がチュポッて抜けた。気持ちよかったのに何でって目を開けたら、肩に乗っていた足も下ろされた。見上げた藤也 さんは怒っているような顔をしている。
(やっぱり、怒ってたんだ)
置いて行かれなかったし体も頭も洗ってくれたけど、だからって怒っていないわけじゃない。
「ト、ヤさん、」
気持ちよくてフワフワしていた体がギュッと強張った。
(どうしよう、怒ってる。怒られる、嫌われる)
嫌われたら、どうしよう。怖い、嫌われるのが怖い。嫌われたくない、嫌だ、嫌いにならないで。お願いだから、俺を嫌いにならないで。
「泣くんじゃねぇ。おまえを嫌いになんてならねぇから安心しろ」
「……ほん、と、に?」
「この先もおまえを嫌いになることはねぇよ」
「……でも、俺、勝手に、」
「それに関しちゃ、あとでたっぷりお仕置きするからいい」
「おし、おき、」
「大丈夫だ、痛いやつじゃねぇ」
そう言って藤也 さんが笑った。
「おまえの考えてることは大体予想がつく。怒ってもねぇし嫌ったりしねぇから安心しろ」
「ぁ」
おでこにキスされた。ほっぺたと、鼻と、口にもしてくれる。俺の右手を握って、五本指全部にキスしてくれた。それから、手首に巻いていたピンク色のアクセサリーにもチュッてした。
「これに高性能のGPSを付けてある。万が一を考えて用意したんだが、役に立ったな」
「じーぴー……?」
「どこにいても、俺にはおまえの居場所がわかるってことだ」
「俺の、居場所」
藤也 さんがチュッてしたアクセサリーを見た。綺麗なピンク色の紐に銀色の玉みたいなのが付いている。よくわからないけど、これで俺の居場所がわかるってことなんだろうか。
「三玄茶屋 の奴らが売人を探してるって聞いて、念のため用意したんだが正解だったな。それに俺もそこそこ顔が知られているからな。俺関連での万が一も考えられなくはなかった」
そうだ、藤也 さんはテレビに出ていた。テレビに出る人は有名人だって、俺だって知っている。
「藤也 さん、テレビ、出てた」
「あぁ、あれを見たのか。滅多に出ることはねぇんだけどな。テレビなんかに出てたせいで、おまえが部屋から出たことに気づくのが遅くなった。ったく、生放送ってのはろくでもねぇ」
部屋から出たって言葉にドキッとした。
「そういや、どうして急に部屋を出た?」
怒っていないって言われたけど、勝手に出たのは悪いことだ。そう思ったら体がまた強張った。でも、聞かれたことに答えないのはもっと悪い。
「……雑誌、を、テレビで見た、雑誌、買おうと思って」
「雑誌? ……経済誌のことか?」
声が出なくて小さく頷いた。
「なんでまた、経済誌なんか……」
「…………写真、載ってたから」
「写真?」
「……藤也 さんの、写真。テレビで見て、かっこよくて、ほしく、なって、」
藤也 さんの顔が、また怖くなった。
「写真、あったら、……いつでも顔、見れるって思って」
「ハァァァ」
「……っ」
どうしよう、すごく大きなため息をついている。また怒らせてしまった。怖くなった俺はぎゅうっと目を瞑った。
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