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第2話┇ひとつになるということ

 目が覚めると、目の前に高松の顔があって驚いてしまった。昨日の事がまだ夢のようでフワフワしている。朝起きて、好きな人が隣にいる。ずっと焦がれていた相手が隣で寝息をたてて眠っている。こんなに幸せなことがあるのだろうか。  今日は土曜日で、時刻は朝の九時半。お互い仕事は休みだし、ゆっくりできるだろう。  伸びをして、ベッドサイドに置いた眼鏡を手に取った。 「ん……尾上さん」 「ごめん、起こしたな」 「おはようございます」  高松は大きな欠伸をして、体を起こした。 「寝たの二時だから、丁度いい時間ですね」  いやらしい事をして、シャワーを浴びて、気づいたら深夜になっていた。せっかく広いベッドだから、同じベッドで眠った。抱き合ったり、軽くキスをしたりして、高松の身体は温かいなと思いながら眠りについたのだ。 「朝飯食べますか? まぁ、パンとコーヒーくらいしか出せないんですけど」 「食べてく」  高松はもう一つ欠伸をして、布団から抜け出そうとする。 「なあ、高松……」  自然と甘えるような声が出て、自分でも驚いてしまった。 「どうしました?」 「やっぱり、もうちょっとベッドにいないか?」  せっかくだから、もう少しイチャついていたいというか、高松の体温を感じていたかった。彼といると、温かくて安心する。 「もちろん!」  高松はもう一度布団に潜ると、俺の手を絡めとって微笑んだ。……こういうのを幸せって言うのかもしれない。 「尾上さん可愛い」 「……可愛くはない」 「可愛いですよ。こうして甘えてくれるの嬉しいです」  高松は俺の目を見て話す。恥ずかしくて目を逸らしてしまわぬよう、俺も意識して彼を見つめた。 「それはお前の事が好きだから……」 「嬉しい。俺も好き」 「だから、その……俺とお前は付き合うって事でいいんだよな?」  完全に舞い上がっていたが、交際の約束などしていないのだ。一回ヤっただけで彼氏面するなと言われたらどうしよう。高松はそんな事を言わないだろうとお気楽に考える自分もいて、天使と悪魔のように争っている。  高松は一瞬表情を曇らせた。バツが悪そうな顔をして、それからごめんなさいと小さく漏らした。  サッと血の気が引いた。重い男だと思われただろうか。 「順番逆になっちゃってごめんなさい。尾上さんさえ良ければ、俺と付き合ってください」  なんだよ……俺の早とちりじゃん。  安堵のため息が漏れる。張り詰めていた糸が切れたようだ。不安そうな彼を早く安心させなければ。お前は知らないと思うけど、ずっとずっと前から、俺はお前のことが好きだったんだよ。 「俺の方こそ、よろしく頼む」  視線が合う。自然と笑みがこぼれて笑いあった。高松と付き合う事になるなんて思いもしなかった。友達のままでいいとずっと思っていたのに。  抱き合ってどちらともなくキスをした。唇が触れるか触れないかくらいの優しい口付け。 「俺、健太郎って言うんです。尾上さんは名前何ていうの」 「浩之(ひろゆき)だよ。健太郎」  結局、癖で高松と呼んでしまうんだろうけど、名前で呼び合うのは気恥ずかしくも嬉しい。もう一度口付けをして、何度も唇を啄む。少し硬い唇の感触を味わった。 「浩之さん……」  ふと視線を外すと、高松の下腹部がテントを張っているのを見てしまった。思わずギョッとして、 身体が強ばる。 「おい……早くないか?」  俺はそういうつもりのキスじゃなかったのに。 「あはは。朝だしそういう事もありますよ」  高松はおどけているが、昨日の事も考えると我慢させているのではないか。今度は挿れたいと確かに言っていた。 「……今でも、挿れたいと思うか?」  俺のために我慢しているのなら、俺の方からも歩み寄らなければ。 「え?」 「だから……! その、俺のケツにちんぽ挿れたいかって聞いてんの」  少々ムキになって、表現が直接的すぎたもしれない。少し恥ずかしくなった。 「……そりゃ挿れたいですよ」  分かってはいたが、面と向かって言われると恥ずかしいものだ。 「しばらくしてないからキツイと思うけど、準備すれば入ると思う……」 「でも、無理はさせたくないんです。俺は大丈夫だから」 「俺だってしたいんだよ」  百パーセント本音だ。昨日より先に行きたい。挿れて欲しいんだ。身体の奥まで暴かれて、グズグズになりたい。しばらくこんな気持ちになった事なんて無かったのに。  昔取った杵柄だ。初めてよりは幾分かマシだろう。慣らせば何とかなる……はず。 「いや、でもゴムとかローションとかは流石にいるな……」 「じゃあ買いに行きますか。近くにドンキありますし」    ドンキの十八禁コーナーなんて初めて入る。ゴムもローションも、コンビニかドラッグストア、あとはネット通販でしか買ったことがない。アダルトグッズだって、わざわざ知り合いがいそうな所で買ったりしないし。暖簾で分けられた先がどうなっているのかは分からないが、やけに緊張する。高松は他に買うものがあると言って、どこかに行ってしまったから一人だ。  意を決して一歩先に踏み出した。そこはまるで、ドンキのゴテゴテした部分を抽出したようだった。  女性向けのグッズやオナホを横目で見ながら、目当ての物を探す。よくあるゴムとローションで良いだろう。適当に手に取った。  アナル用のグッズが並んだコーナーを見つけ、その中のエネマグラを注視してしまった。昔は開発と称してエネマグラを使ったアナニーをしていたのだが、嫌な事があってから、十年間後ろを弄ることはなかった。高松とセックスするようになれば、また必要になるかもと思い箱を手に取る。……うーん、これはすごいな。 「それ、欲しいんですか?」 「うわっ!?」  背後に高松がいた事に全く気付かず、声をかけられただけで素っ頓狂な声を上げてしまった。 「俺に気付かないくらい夢中で見てたんですか?」  言い返す言葉もない。図星を突かれて言い淀んでしまい、軽く笑われた。 「やっぱり俺のは入らないかな」 「正直やってみないと分からん。でも、入りさえすればイけるとは思う」  入口は元の硬さに戻っても、ドライの感覚は忘れていないと思う。高松と出会ってからどうしようもない劣情に苛まれ、奥が疼いて仕方がないのだ。こんな事になるなら後ろも触っておけば良かった。 「買ったらどうですか? 俺も尾上さんに無理させたくないし、これでもっと感度上がるんですよね?」 「……う、うん」  それはそうなんだが、恥ずかしいだろう。エネマグラでアナニーしてるのを人に知られるの。恋人であっても、だ。 「素直で可愛い。俺はね、尾上さんが気持ちよくなってるのを見たいんですよ。だから、急がなくても大丈夫」 「……本当は?」 「めっちゃ挿れたいです……」  カッコつけてた割に正直な奴だな。そういう素直なとこも高松の良いところなのだが。 「あんま俺の事気にしなくていいぞ。何だかんだ言ってどうせ入るだろ」  やってみなければ分からないのは本当で、そこまで悲観しなくてもいい。ダメだったらその時考えればいい。それに、彼の優しさや正直なところに応えてやりたいのだ。俺の事を思ってくれるのが、すごく嬉しいから。 「いや、その……こんな事言って、結局全然我慢出来なかったら申し訳ないので」 「……そういう心配か」  やっぱ我慢できないと言われて、乱暴に抱かれるのを想像してしまう。もう少し先の、もっと余裕の出てきた頃であれば、そして高松にならば。 「ほら、こんなとこ居座ってないで帰るぞ」 「はーい」  余計な煩悩を打ち消すように、急いで暖簾の先に出た。  セックスをすると意気込んでいるものの、そこに辿り着くまでに工程を踏まなければならない。腸内を綺麗にしたり、入口を解しておいたり。面倒でも後の事を考えると絶対にしなければならない。病気にも痔にもなりたくない。たまに羽目を外したりすると、おざなりになる事はあるが、気をつけていたいものだ。  シャワーを浴びて準備をしていると、妙な気持ちになる。期待と恥ずかしさが混じった複雑な感情。俺は食われるための準備をしている。自分は恥ずかしい事をしていて、これから高松に身体を暴かれるのだと思うと、とてつもなく興奮した。  ドンキから帰ってきて、昼飯も食わずにこんな事をしているのだから、俺も高松もどうかしている。    どうせ脱ぐのだが、一応パンツと肌着だけは着ておいた。人の家を裸で歩けるほど図太くはない。  高松は既にシャワーを浴びて、寝室で待っていた。彼の隣、ベッドに腰掛ける。 「なんか、おっさんって感じの格好でごめんな……」  少しヨレた肌着と、ダサい柄のトランクス。こんな姿を見たら、高松も萎えるんじゃないかと心配していた。 「そんな事気にしてたんですか? もっと恥ずかしいとこ見てるのに?」 「そうなんだけど。あんま、そういう辱めるような事を言うな……」  からかわれているのが癪で、隣の高松から顔を逸らす。 「尾上さんエロいですよ。めっちゃ興奮する」  高松の左手がベッドに置いた右手に重なる。俺の指を一本一本確かめるようになぞるものだからくすぐったい。ふと、指がエロいと言われた事を思い出してしまい、その先を想像して一人恥ずかしくなる。俺に欲情する高松の気持ちは全く分からないが、俺が高松に抱いている感情も、きっと誰にも分からないものなのだろう。 「服脱がせていい?」  わざわざ顔を覗き込まれた。顔を合わせたくないから逸らしているのに、意地悪な奴だ。  高松は俺の眼鏡をそっと外して、ベッドサイドに置いた。仕方ないが、視界がぼやけるのは勿体ないなと思う。 「……おう」  高松は俺の下着を手早く脱がせると、自分も全ての衣服を脱ぎ去った。  背中を支えられ、ベッドに優しく押し倒される。  逆光で縁取られた高松の輪郭と、影からこちらを捕らえようとするギラついた瞳。昨日の事を思い出して、胸が高鳴る。 「高松……その、出来るだけでいいから……や、優しくしてくれ」  高松は眉をしかめて、小さく息を吐いた。 「尾上さんはそういうつもりないんでしょうけど、そういうのって、煽り文句なの知ってます?」  思ってもいなかった言葉に慌ててしまう。逆効果じゃないか! 「ち、違う! 本当に言葉の通り受け取ってくれ……」  生娘のように振る舞いたい訳じゃない。激しくされたら酷いのだ。ケツが裂けるし、腰も痛める。勢いだけで何でも出来る年齢じゃない。 「本当は気にしないでくれって言いたいんだけど、俺もそんな余裕ないから……はは、結局我慢させちゃってんな」  申し訳なくて顔を逸らした。俺だって少しは不安なんだ、と言っても今さら意味が無い。もう腹を据えるしかないのだから。  ぎゅっと優しく抱きしめられた。俺が好きな高松の匂い、高松の体温。  耳たぶを指で優しくなぞられると、ビクビクと肩が跳ねた。そのまま口付けをされ、何度も下唇を吸われた。薄く唇を開けると、待ってましたとばかりに高松が侵入してくる。  静まり返った部屋に水音が響く。酸素が薄くて、ふわふわして気持ちいい。口の上側、口蓋を舐められるのが好きで、耳攻めと同時にされると必死で感じ入ってしまった。 「出来るだけしか我慢できないよ?」  耳元で囁かれる。吐息まじりの色っぽい声に、背筋がゾクゾクして、身体が震える。 「あ、あぁ……」  きっと全部気のせいだ。ナカがヒクついて、早く挿れて欲しいと身体が叫んでいるのも。 「たかまつ、準備してきたから……早く触って」  頭にあった枕を腰の下に敷いて、腰の位置を高くする。自分で両足を持ち上げ支えるように開くと、高松が息を呑むのが分かった。 「据え膳だなぁ……」  高松は俺のアナルをまじまじと見つめていた。そんな所をじっくり見られたら、恥ずかしいからやめて欲しい。 「据え膳なら早く食えよ……」 「じゃあ、いただきますね」  高松はベッドサイドに置いたプラスチックの容器を手に取った。手のひらにローションをたっぷりと出して、人肌で温めている。 「触りますね」  まだ少し冷たいローションが触れて、体が強ばる。力を抜いてと言われるがまま、深めに息を吐き、脱力する事を心がけた。  高松の人差し指が、穴の周りをくるくるとなぞっている。流石にまだこそばゆい。穴の入口に少しだけ指先を入れてみたり、挿入の際に痛みを伴わないように、柔らかくしようと気を使ってくれているのが分かる。先に自分である程度解しておいた時よりはマシだが、どうしても異物感はある。 「本当に処女じゃないんですよね……?」 「ん……こんな、準備のいい処女いねぇよ」  高松はそう言うが、所詮は何回も酷使している穴だ。緊張して強ばっているからそう思うのだろう。 「でも、うまく力抜けないかも」 「じゃあ……キスしよ?」  高松は口付けをすると、唇の隙間から舌を差し入れてくる。舌先を軽く吸われ、付け根を高松の舌先で舐められる。 「ふぅ……んんッ……」 「ん……とろけた顔してる」  高松とのキスは気持ちいい。今までしてきた中で一番のキス。高松が上手いのか相性がいいのかは分からないが、ふわふわして力が抜ける。 「入りそう」  高松は慎重に指を押し進め、徐々に体内に侵入してくる。指二本が痛みなく入って安心した。それからは穴の中を探るように、広げるように動く。直接的な刺激を与えられる事もなく、圧迫感とうっすら感じる快感だけを頼りに、浅い息を吐きながらもどかしさに身を捩っていた。 「んー……ここ?」 「あっ♡♡」  思わず声が出る。小さなしこりをトントンと弾かれると、肩が震えて目を瞑ってしまう。捏ねたり、撫でたり、弾いたりして、高松は執拗にそこばかりを攻め、与えられる快楽はより一層強くなる。 「あ♡♡やっ♡♡そこっ、ばっかやめ……!」 「もっとじゃなくて?」  気持ちよくて声を抑える余裕すらない。ビクビクと身体が震える。気持ちいい、もっとして欲しい。指でこれなら、高松のちんぽを入れたらどうなるの……。 「んっ♡ん♡……ああ♡あ……も、いれて」  あられもない姿をさらして、こんな下品な姿じゃ高松に嫌われるかもしれない。それでも挿れて欲しいと懇願してしまうのだから、本能には逆らえないのだろう。 「あー……ほんとえろ」  高松の本音はため息のように漏れ出ていた。情欲にまみれた視線が俺を射抜く。抱いてほしい、めちゃくちゃにしてほしい。  髙松はベッドサイドにあった新品の箱からゴムを一つ取り出して、手早く装着した。追加でローションを垂らして、ペニスの先端を入口に擦り付ける。亀頭部分が中に収まってしまえば、もう大丈夫だろう。 「たかまつ……」  自分の中に高松を感じる。一つになっている事実が本当に嬉しいし、もっと高松にも悦んでほしい。そう思って少し締めたら身震いしていたので、調子に乗ってもっと締めた。 「ちょっ……と、そんなんされたらイきそうになるから」 「イっていいぞ。……何回でも」 「そんな事言って……。優しく出来なくても知りませんよ」 「別にいい。もう大丈夫だから、そういうの気にしないでいいから……高松の好きにして」  高松は糸が切れたように、引き抜いたペニスを最奥に目掛けて一気に打ち付けた。その衝撃に耐えきれず、うめき声のような下品な声が漏れてしまう。 「お゛っ♡♡あ゛ッ♡あ♡♡」 「そんなにっ……俺の事煽っていいの?」  高松は少しイラついたように、何度も何度も勢いよく腰を打ちつけている。奥だと思っていた場所より更に奥、入れてはいけない所をこじ開けられている感覚。頭の中は真っ白で、もう何も考えられない。 「もう……尾上さんが悪いんだよ?」 「あ゛あっ♡♡あッ♡あ〜♡♡」  高松のペニスは長くて、奥まで届く。細めな割にカリ高で前立腺も結腸も刺激されるし、何より硬いのだ。気持ちよすぎて頭がおかしくなりそう。これが高松のちんぽ……♡ 「あー、尾上さんの中すごい締まる。すぐ出ちゃいそ……」 「あ♡♡……あぅ゛っ♡ああ♡」  あまりにも気持ちよくて、理性も手放していた。口はだらしなく開ききっていて、もう声を抑えられない。喘ぎ声かうめき声か分からない声を出していた。 「尾上さんッ」 「ぁぅ……♡な、に?」  高松が悩ましげな顔をして俺を呼んでいる。その顔もまたかっこよくて、いやらしくてたまらない。 「好きだよ」  中がきゅんと締まる。 「おれも……ぉッ♡うぅ」  好きだと言われると嬉しくなってしまう。年甲斐もなくときめいて、柄にもなく泣きそうになる。イきたくて、身体に力が入った。 「すき♡……たかまつ、すき♡すきすきッ……!」  高松の名前を呼んで、好きだと言いながら絶頂した。体がガクガクと震えて、痙攣が止まらない。意識がどこかに飛んでいったまま、帰ってこない。その間も高松はピストンを続けているから、ずっとトんでいた。あれだけ喘いでいたのに、もう声も出せない。 「はッ……おれもイくね? イくよ、イく……!」  高松は奥に擦り付けるように、二、三度腰を打ち付けて、身震いした。    全裸のままベッドに座って足を組む。ベッドサイドに置いていたメビウスのソフトケースから、タバコを一本取り出して火をつけた。高松は寝っ転がってiQOSをふかしている。楽でいいな。 「尾上さんって中イキしやすいタイプなんですね」 「……引くか?」  後ろでイけるようになったのは、元々の素質と開発の賜物だ。だが、それが仇となり、遊んでいると思われて引かれたらどうしようと心配になった。 「全然。むしろ、エロくて最高でした……!」 「そ、そうか」  情事中の痴態を思い出されると恥ずかしくなる。正気じゃない時の話をするな。  散々喘いだからか声が枯れてしまい、タバコの煙でむせてしまう。元々調子の良くない腰も痛み、完全に満身創痍だ。年には敵わないな。 「あー……腹減ったな」  昼飯も食べずにセックスをして、気づけば昼の三時半。汗と色んな液体で体がベトベトする。さっさとシャワー浴びて飯食いたい。ただ、変な時間に食べると遅い時間に腹が減るからどうしたものか。 「お昼どうします?」 「夕飯食べたいから、今はちょっとだけ食べる。パンとかカップ麺ない?」 「カップ麺じゃなくて、袋麺なら。塩らーめん!」 「お、いいな。それ食べる」  袋麺くらいなら、小腹も満たせるだろう。それに、この袋麺は塩派だから嬉しい。 「さっさとシャワー浴びるか」 「機嫌直してくださいよ〜」  先にシャワーを浴びていたら高松が乱入してきて、俺の体を散々弄んだ。挿れはしないものの、今度は前で簡単にイかされてしまった。辱められた気分だ。 「お前が悪い」  本当はそこまで怒っていないし、別に悪い気もしないけど、許していたらこの先不安だ。調子に乗りそうで嫌なんだ。 「そういえば夕飯、外で食べますか? それなら帰りはそのまま送れますけど」  答えに困り言い淀んでいると、高松が不思議そうな顔をする。 「……あのさ、やっぱもう一晩泊まってもいい?」  寂しい。離れたくないと思ってしまった。せめて、あと一日くらいはそばにいさせて欲しい。 「もちろんです」  高松の表情はみるみる明るくなり、満面の笑みで言うのだ。  その笑顔が眩しくて本当に嬉しくて、心の底から良かったなと思う。俺はやっぱり、高松が好きなんだ。 「じゃあ夕飯はカレー作りましょう!」 「そういや、お前ドンキでなんか買ってたな。料理出来んの?」  カレールーと肉、じゃがいもが買い物かごに入っていた事を思い出す。 「まぁ、『漢の料理』くらいですけど」 「十分だろ」  俺は全く料理をしないので純粋にすごいと思う。 「カレー好きなんだよ」  きっと、高松の作るものならなんでも良くて、一緒に食べられるだけで美味しいと感じるのだろう。ひとつ屋根の下で寝食を共にする。こんなに幸せな事は、きっと他にない。 

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