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第14話 荒手の戦法

「だから……」  オレの威圧など意に介さず、するりと腕に絡みついてきたタマは、耳許で淫靡な音を紡いだ。 「この身体、捧げるよ? って話」  つうっといやらしくオレの脇腹に、指先を走らせるタマに、ぞわりと背を撫でたのは、嫌悪からくる悪寒だった。 「……興味ねぇよ」  腕に絡むタマを剥がしにかかるオレ。 「そう言わずにさ、試しにシてみない?」  わざとらしく唇を窄め、顔を寄せてくるタマに、俺は平手で、その口を塞ぎ遠退けた。  解せないと言わんばかりに不満を浮き彫りにした瞳でオレを見るタマに、白い目を向ける。 「あのな。男子高校生だからって、エロいコトなら、なんでもしてぇって訳じゃねぇんだよ」  オレは、女に困っている訳でもない。  男で処理をしなくてはいけないほど、性欲を持て余してる訳もない。 「なんで好き好んで男とシなきゃなんねぇんだよ。興味本位でシたいなら、ほか当たれ」  吐き捨てるオレに、タマの瞳が再び妖艶な色香を纏った。  16歳の少年のものとは思えない空気を侍らすタマに、心臓がどくりと呻く。  タマの口を押さえている手に、ぬるりとした生温かい感触が這う。 「……っ!」  慌て引いた手には、濡れた感触と、ジンジンとした痺れが残っていた。  オレの掌を舐めた舌が〝ごちそうさま〞とでもいうように、ねっとりと唇の上を這う。  痺れが残る手で、にんまりと笑うタマの顎を、がっと掴んだ。  顎に当てた片手で、両の頬をむにゅりと押し潰してやる。 「お前よりエロい女なんて、ごまんといるんだよ。そんな女ばっかり相手してるオレが好き好んで、男に手を出すはずねぇだろ」  凄みを利かせ、にたりと笑い返してやるオレに、タマの顔がぐにゃりと歪んだ。  歪んだ顔の目尻が、ほんのりとした赤みを帯びる。  腹立たしさに昇った血が、タマの目尻を紅潮させた。  両手でオレの片手を剥がしたタマは、涙の浮かぶ瞳をキッと吊り上げた。 「……絶対、落とすからっ! 僕を好きにさせてやるからっ!」  色香に靡かないオレに、自尊心を傷つけられたタマの負けず嫌いが発動したらしかった。  ビシッと指を差し宣誓するタマに、オレは、勝手にしろと放置を決め込んだ。  それ以来タマは、何かにつけてオレにまとわりつき、〝カッコいい〞だの〝好き〞だのと宣うようになった。  暫く経ち、言葉だけではオレが落ちないとわかったタマは、手法を変える。  心が落ちないのであれば、身体を攻略してやろうとでもいうように、荒手の戦法で攻めてくる。  いつの間にか、オレをその気にさせ、勝手に乗っかってくるようになっていた。

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