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第15話 獣には、なりたくない

 入口でオレの先端をぬぽぬぽと弄び、んーとキスをせがむタマに、渋々と唇を重ねた。 「鸞ちゃんの大きさ知っちゃうと、その辺のじゃ満足できなくなっちゃったんだよね」  あっ……と熱に塗れた吐息を零すタマに、掴んだままの尻を少しずつ沈めていく。  女ほどの柔らかさはないが、悪くない弾力がオレの指に反抗してくる。  タマを可愛いと思ったコトなど、一度もない……とは、言えなかった。  だが、男で抱くのは、タマだけだ。  同性すらも、欲情の対象だと認めてしまったら、俺は、ただの節操のない(けだもの)になってしまう……。 「ぜんぶ…挿入っ、た……?」  とろりと溶けた瞳でオレを見詰め、腰を燻らせるタマ。 「わかってんだろ? まだ、全部じゃねぇよ」  にへらっと笑んだタマは、尻を支えるオレの手に手を重ねる。 「奥まで、挿入れていいよ。でも、初めてだったら、このサイズは凶器だよね……」  ははっと薄く笑ったタマは、奥深くまで飲み込んでやろうと、オレの手を剥がす。  オレの両手を指を絡め繋いで拘束した上で、身体を揺すり体重をかけ、腰を落とし込んでいくタマ。 「んぅ……、んん…っ」  最奥への侵入を拒む窄まりは、簡単にその口を開いてはくれない。  愚図るように涙の滲む瞳で強情ってくるタマに、はっと息を吐く。 「放せ」  拘束されている手を解放するように指示し、軽く腰を突き上げてやる。 「ぁ…っ………んー…」  名残惜しげに片手だけを放つタマに、その手で腰骨を掴み、浅く深く奥を小突く。 「ぁ……は、ぁ……ん、んぁ…………ひんっ」  緩くなる禁忌への門を重い一突きで、ぶち抜いた。  タマのペニスは、押し出されるように潮を噴き、先走りとも精液ともつかない粘液を溢れさせる。  より一層、媚びてくる襞と肉輪は、オレを煽る。  引き攣る音を立て啼いたタマの喉許に喰らいついた。  ガツガツと本能のままに奥まで犯してしまいたい衝動を、ぐっと腹の底に押し留める。  意識を飛ばしそうになっているタマの身体が馴染むまで、オレは動きを止める。 「お前に、とっても凶器じゃねぇか」  ガタガタと震えるタマの背に指先を走らせれば、涙や涎に塗れただらしない顔がオレを見やる。 「鸞ちゃんになら、ナニされても気持ちぃの」  へらっと笑う顔は、淫靡にも可愛くも見える。  涎も涙も、鼻水さえもべろりと舐め取り、そのまま唇を重ねる。  嫌々ながらに重ねていたはずの唇を貪っているオレがいた。 「ん、んん……ぁ、は…」  喘ぎの狭間に、嬉しそうな笑い声が混ざり込む。 「変態………」 「はあ…っ。そ、だね……でも、鸞ちゃんも、だよ」  オレも変態だと宣うタマに、冷めた瞳を向けてやる。 「僕の、なか…気持ちぃ、でしょ? 僕のお願い、断れない…くらいには、さ」  にんまりと笑う顔は、悪戯が成功した子供のようなあどけなさと、なんの躊躇いもなく理性を捨て去れるほどの色気を含んでいた。 「お前に惚れた訳じゃねぇから」  ちっと舌を打ち、欲に溺れながらも勝ち誇った顔をしているタマの身体を床へと押し倒す。 「お前のこの身体に、溺れてるだけだ」  オレの雄芯が突き刺さっている腹に平手を当て、ずるりと半分ほど引き抜く。 「ここよりもっと奥まで。腹、突き破るくらいここで扱いて、お前の奥の奥で無駄撃ちしてやるよ」  子種を与えられたところで孕まない腹に、精液をぶちまけマーキングしてやるのだから喜べと、腹に乗せた手を胸に向かい走らせた。 「壊れるくらい、激しく、……ね?」  ふっと馬鹿にするかのように笑ったタマの足が、オレの腰に絡みつく。  腹の上を滑ったオレの手を掴んだタマは、指の間にねっとりと舌を這わてくる。 「堕ちても、やめねぇからな」  煽り立てるタマに、はっと籠る熱を吐き、目の前の身体に性欲のすべてを注ぎ込んだ。

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