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第20話 同居人のミケ
気持ちのいいコトが好きで、愛だの恋だのは二の次だった。
可愛くもあり、エロくもある。
天は二物を、僕に与えた。
僕に堕とせない男なんていない。
……はずだった。
比留間の名が、礼鸞を恐ろしい者だと位置づけていた。
でも、僕には世間の評判なんて関係なくて。
大きな上背 も、きつく見える顔立ちも、僕の心を騒がせた。
ひりひりと凍てつくような雰囲気を纏う礼鸞の懐に入りたかった。
冷たく見えるその中心は、きっと凄く暖かな場所だと思ったから。
第一印象は最悪で、初めから色気で堕とそうとした僕は、嫌われてしまった。
男には興味がないと、すっぱりと切り捨てられた。
それでも、諦めるコトは出来なくて。
僕は礼鸞を攻略すべく、まとわりつく。
どんなに突っ跳ねても懐く僕に、礼鸞の忌避感が薄れていく。
ヤり始めれば、興が乗る。
嫌悪や侮蔑の感情でイチモツが萎れないなら、可能性はゼロじゃない。
じわじわと侵略した僕に、礼鸞の身体は音を上げた。
でも、その心は何時まで経っても、僕のものには、ならなかった。
ポチから金を受け取り、寝床に帰る。
僕が暮らしているのは、18戸建てのマンションだ。
1階の1部屋が事務所兼待合い場で、残りの5部屋が僕たちの職場。
2階以上がキャストの住居になっている。
僕の部屋は3階で、ミケという同僚と2人暮らし。
基本的には4、5人が同じ部屋で暮らしているが、僕とミケはここの稼ぎ頭で、なかなかの厚待遇になっている。
「お帰り」
黒、茶、金の3色で疎らに染まった髪を揺らして、ゲーム画面から僕へと視線を向けるミケ。
偽金を掴まされたのは、僕ではなく、このミケだった。
どこを取っても〝ミケ〞には成り得ないこいつの本名は、山田 弘次 。
ミケというあだ名は、初めて会った時の髪の色が由来だった。
毛先が茶色で、金髪を挟み、根本が真っ黒な髪の色を見て、思わず三毛猫みたいだといった僕の言葉が採用された。
オスの三毛猫は数が少なくて縁起がいいらしいと、当の本人も気に入り、それ以来、ミケと名乗り、頭は今の色合いに落ち着いた。
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