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第25話 害虫退治?

 真横から飛んできた声に、男たちと俺の視線が引き寄せられた。  部屋の壁に凭れた礼鸞の冷たい瞳が、俺たちを()めていた。  助けてと泣きつきたい懇願と、こんな姿を見られてしまった羞恥に、心がピキリと音を立てた。 「若にくっついた悪い虫を退治しよう…っ」  俺の醜態が収められたデジタルカメラを、さっと隠しつつ言葉を紡ぐ黒髪男の顎が、ガッと掴まれた。 「害虫退治、ね?」  デジタルカメラを持っていた手も同時に捻り上げられ、ごとりと重い音を立て床に転がった。  のそりと近づいてきたポチが、転がったデジタルカメラを回収するのと同時に、金髪男に睨みを効かせた。  びくりと肩を跳ね上げた金髪男は、慌て俺から手を離し、銃口でも突きつけられたかのように、ハンズアップして見せる。 「瞬は、オレの世話係なんだけど? 害なんて微塵も(こうむ)ってねぇし、利益しか生んでねぇんだけど?」  なにを基準に害だと言っているのかと、礼鸞は男の顎を掴む手に力を入れる。  ポチに腕を引かれ、金髪男の手中から抜け出した。 「ぁ、が………っ」  ギリギリと掴み上げられる顎に、黒髪男の呻きが響く。 「オレと柴田が居ない時狙って、害のない弱いもんイジメしてるお前らの方が、よっぽど害虫っぽいけどな?」  礼鸞の視線が、あからさまに盛り上がっている金髪男の股間を睨めた。  傍らに俺を置いたポチは、デジタルカメラを操作し、中のデータを根刮ぎ削除した。 「誰の指金(さしがね)?」  黒髪男の顎を掴んだままに、礼鸞の足が金髪男の股間へと向かう。  じりじりとかけられていく圧に、金髪男の血の気が引いていく。 「言わねぇってコトは、オレより忠義を尽くす人間がいるってコトか?」  黒髪の男は顎を掴まれ、まともに喋れず、金髪男に至っては、急所を捕らえられ、礼鸞の言葉にかまっている場合ではない。  答えない2人に代わり、ポチがぼそりと声を零した。 「ミケ」  紡がれた言葉に、黒髪男の瞳がゆらりとポチを見やる。

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