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第27話 つくづく、狡い< Side 礼鸞

 裸に剥かれ、無理矢理に欲情させられた瞬からは、男を狂わせる色香が溢れていた。  誰だってあんな色気にあたれば、理性が揺らぐ。  だが、色欲よりも苛立ちが、オレの腹を煮立たせた。  怒りに任せ、害虫どもを退治したオレは、瞬を部屋へと(いざな)う。  獣になりたくなくて、必死に逸らせる視界に、無駄な努力だと言わんばかりに肌蹴たシャツを羽織っただけの瞬が立ち入る。  オレを地獄に堕とそうと思っての行動じゃない。  瞬に他意がないのは、わかっていた。  ……だが、我慢ならなかった。  傷つけたくなくて。堕ちたくなくて。  苛立ちを瞬に押しつけ、背を向けるしかなかった。  伸した2人が転がる部屋へと戻ったオレの瞳には、何事もなかったかのような無人の空間が映る。  剥ぎ取られた瞬の衣服が転がっているだけだった。  あの2人は、オレが消えたのを好機と捉え、ここぞとばかりに逃げたしたのだろう。  末端の雑魚など、どうでもいい。 「なんだよっ……はな、せっ…」  ミケの抗う声が、耳に届く。  ポチに首根っこを捕まれ、引き摺られるミケの姿が視界に入る。  オレの姿を捉えたポチは、ミケを目の前へと連行してくる。  放られるように座らされたミケは、むすりと顔を歪め、そっぽを向く。 「お前さぁ、何してくれちゃってんの?」  ミケの目の前にしゃがみ、瞬の服を片手に首を傾げるオレ。 「タマに頼まれた…、訳じゃねぇよな?」  瞬を追い出そうとした輩が、タマの同僚であるミケの指示で動いたとなれば、オレの疑念は、自然とそちらに向かうのは致し方ない。  だがタマならば、あんな輩など使わずに自力で瞬を追い出すコトだろう。 「タマは、知らない。関係ないよ。僕の一存」  タマの名に、ミケは慌て、オレの言葉を否定する。  主犯であるミケを潰してしまえば済む、という話ではないのが厄介だった。  ミケになにかあれば、タマが黙っていないだろう。  タマとの(いさか)いに発展させないためには、ミケを説き伏せる必要があった。  オレにタマを切り捨てる気概があるなら、たぶん事は簡単だった。  だが、オレはタマと揉めるつもりなど毛頭ない。切り捨てる気も、手放す気も、更々ないのだ。  ……つくづく、狡い。  タマになにも返さないクセに、離れていくコトも許さない。  その気がないのなら手を放せばいいものを、オレは握った手を開くつもりはない。  傍にいたいのなら居ればいいと、関心のないふりを装いつつも、逃げていかぬようにと、中途半端な優しさを振りかざし、その首を柔く甘い真綿で捕らえている。

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