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第28話 オレの想いは
「礼鸞に悪い虫がついてるよって、教えてあげただけじゃん。恥ずかしい写真でも撮って、脅したら消えるんじゃない? ってアドバイスしただけだし」
ミケは、悪びれる様子もなく自分の正当性を主張する。
「なんで、瞬を消そうとしてんだよ。オレの周りに誰が居ようと、お前に関係ないだろ」
なんの接点もないミケと瞬。
それに、オレの周りを誰が彷徨 こうと、ミケに不利益など生じない。
ミケが瞬を追い出そうとする理由が、わからなかった。
「関係あるもん」
言葉に眉根を寄せるオレに、ミケは膨れっ面で面白くなさげに言葉を紡ぐ。
「あいつが居たら、タマが不安になる」
「は?」
ミケの言葉に、素っ頓狂な声が零れた。
「タマのものを横取りしようとするあいつが悪いのっ」
再び頬を膨らませたミケは、子供が拗ねるかのように、ぷいっと顔を逸らせた。
どうやら、ミケの中でのオレは、タマのものらしい。
そんなオレを後から来た瞬が、かっ拐っていくのではないかと、心配している、と。
……どこから訂正するべきか。
まずは、オレはタマのものじゃない。
強いていうなら、今オレの子を妊娠している女のもの。
婚姻関係は結んでいないし、オレがその女を愛しているのかと言われれば、答えは否だった。
子供 が出来てしまったと伝えたオレに、親父は喜んだ。
だが、想いの欠片もない相手だと告げれば、暫し考えあぐねた親父は、産まれるまでは、お前の気持ちが悟られぬようにしろと告げられただけだった。
だから、オレは一応その女を愛しているフリを貫いている。
オレは、その女のものだとミケに説いたところで、事態は変わらないだろう。
本当はそんな女に1ミリの愛情もないクセにと、心を見透かされそうな気さえする。
そもそも、オレたちの関係を、外野であるミケがとやかく言うコトがお門違いなのだ。
それに、瞬にその気があるとも思えない。
ついさっき〝あんたになら〞などと言われたが、あれはそういう意図じゃない。
オレを堕とそうとしている訳ではなく、興奮している姿を見かねての発言に見えた。
現に、オレの一喝で竦み上がった瞬は、申し訳なさげに口を噤んだ。
本気で堕とそうとしているのなら、身体が熱いだのなんだのと理由をつけ、食らいつくくらいのコトはしてきそうなものだ。
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