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第30話 当たり前の道理 < Side ポチ

 礼鸞を威嚇して帰ったミケを尋ね、職場に赴いた。  あの場でミケの名を出さずに、俺が叱るコトも考えたが、礼鸞から叱られる方が堪えるはずだと、あえてその名を口にした。  礼鸞に〝ここに連れてこい〞と指示を出され、俺は素直にミケの身を差し出した。  冷たくあしらうがタマを大事にしている礼鸞が、ミケを無下に扱うコトはないという確証があったからだ。  いつものように金を払い、ミケを買う。  酷い客は、NGリストに入れ追い払うコトも可能だが、この店にも比留間は1枚噛んでいる。  つまりは、俺をNGリストに入れるコトは、出来ない仕組みになっている。 「なんで俺に相談しなかった?」  マンションの一室は薄暗く、リビングに鎮座するキングサイズのベッドに、しっかりと服を着たまま、腰掛けた。  オーバーサイズのTシャツだけを纏ったミケは、無言で膝の上に乗ってくる。  ミケを見詰める俺の視界には、3色に染められた髪の毛が映るだけで、その瞳はこちらを向かない。  視線を合わせないのは、俺の質問に答える気はないという意思表示だ。  俺の首に両腕を回し、抱き着いたついでとばかりに、頬を擦りつける。  肌が露になっている俺の首筋に唇を寄せたミケは、ぺろりとそこを舐めた。  舌に与えられた湿り気に、空調の風が当たり、その場所だけがひんやりとした冷気を感じる。  よりにもよって、ヤるコトしか頭にないようなあいつらを、けしかけやがって……。 「答えねぇんなら、帰る」  膝に乗るミケを押しやり、立ち上がろうとする俺。  首に回されているミケの腕に、力が入った。 「だって……」  俯いたままのミケの口から、ぼそりと音が漏れる。 「礼鸞と一緒に居るってコトは、あんたとも一緒ってコトだろ……?」  居心地が悪そうに揺らいだミケの瞳が、眉間の皺と共に俺を見上げた。 「あんた、あいつの味方じゃん……」  言っても無駄だろ、と俺の膝の上で拗ねるミケ。  自分が慕う人間、礼鸞が拾ってきたものなのだから、配下にいる俺は無条件で受け入れる。  ミケに、シュンを追い出したいから協力しろと言われたところで、俺は従わない。  そんなのは、当たり前の道理だ。 「追い出す方法を相談しろとは言ってねぇだろ。シュンの人となりを聞いてこなかったんだって話だよ」  まぁ、知り合ってそんなに経っていないから、深くは知らねぇけど…と、呟く俺に、ミケはむすりと顔を歪めたまま口を噤んだ。 「なんで端からシュンを、…礼鸞の周りに現れた人間を追っ払おうとすんだよ?」

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