38 / 160

第38話 ムードなどなくとも

 止めるコトもできた。  跳ね返すコトもできた。  拒否するコトもできた。  だけど。  ミケの舌が、下着の上から、くたりと垂れ下がる俺のペニスを擽る。  揺り起こそうとするように、ぐにぐにと押しつけられる熱い舌先が、ぞわりとした興奮を生む。 「俺の意思じゃねぇよ」  理性の外で、腰が揺らいだ。  突っついてくる舌先に、もっと広く触れてほしくて、腰を寄せていた。 「お前のせいで俺が嫌な思いしただろうからって、タマに連れて来られたんだよ」  きゅっと眉根を寄せたミケの瞳が俺を見上げる。  中途半端に開いた口から覗く舌は、そこだけ別の生き物のようで。  熱心に奉仕する姿が俺の身体を熱くする。 「お前の、…若の犬に噛みつくっていう粗相をチクらないでくれって、口止めに連れて来られたの」  右手に繋がるミケの手を振り払い、顔にかかる3色の髪を掻き上げてやる。 「お前自身に謝らせるつもりだったみたいだから、ちょうど良かったんじゃね?」  ミケの唾液で湿っている下着から、竿を引き摺り出した。 「……嫌な思いさせて、悪かったよ」  心の籠っていない言葉を、ぼそりと紡いだミケは、垂れ下がるペニスを舌で掬い、熱い口腔内へと誘う。  自分のために動いてくれたタマの気持ちを無下にするわけにはいかないミケは、反省の色など皆無なクセに、俺への奉仕を止めなかった。  舌で裏スジを擦られ、頬裏で先端を捏ねられ、じゅるりとカウパーごと吸い上げられれば、嫌でも性欲は煽られた。 「は……っ」  ムードもなにもない口淫でも、ねっとりとしたいやらしい音を立てながら、熱い粘膜で扱かれれば、それなりに興奮は沸き立ってくる。  息苦しさに鼻から放たれる吐息が、熱を纏い下っ腹を擽る。  ぶるりと震える腰に、ミケの妖艶な視線が俺を炙る。

ともだちにシェアしよう!