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第41話 その心には棲んでない
「別に礼鸞の周りに現れた人間全部を追い払おうとはしてないよ」
俺の膝の上に座り、ミケは、不満を露にぼそりと言葉を吐く。
「前にも言ったでしょ。礼鸞は、タマのものなの。タマに寂しい思いも、悲しい思いもさせたくないの」
最初に感じたミケの捨て置けない雰囲気に、何度となく、その身体を買った。
当初のそれは、同情や憐れみの色が強かった。
だけど、会う度にミケの色気にあてられた俺は、次第に忘れられなくなっていて。
性別など超越するくらいには、ミケに惹かれていた。
詰まらなそうに歪む頬を、機嫌が直らないかと撫で擦る。
「お前の中心は、どこまでいってもタマなのな」
心が、諦めの溜め息を吐いていた。
俺の名は、未だにミケの価値に追いつく気配はない。
権威も金もない俺という存在は、ミケの心の片隅にすら住んでいないのだと思い知る。
ミケがタマに抱いている気持ちは、色恋のそれじゃない。
強いていうなら、タマに自分を投影し、恋をしている気分を味わっているといったところだろう。
「タマは、シュンの存在が怖いんだ。出会ってから今まで、少しずつ礼鸞との関係を詰めてきたのに、シュンは一足飛びで礼鸞の懐に入っちゃったから……そんなの、狡いじゃん」
不服げに顰む顔は緩んではくれず、面白くなさげに何もない空間を睨んでいた。
その瞳に俺を映してくれれば、ミケ自身を愛してやれるのに…なんて想いが溢れそうになる。
「狡いもなにも…。決めるのは礼鸞だろ。外野がとやかく言うもんじゃねぇよ」
撫でていた頬を、むにゅりと摘まむ。
むにっと伸びた頬のまま、不細工な顔で俺を見やるミケ。
そんな顔でも可愛いと思ってしまうのは、やっぱりミケを好きだからなのだろう。
「てか、シュンを追い出したら、タマは悲しむかもな?」
首を傾げる俺に、ミケは意味がわからないと眉根を寄せた。
「なんでだよ?」
泥棒猫たるシュンを追い払えたのなら、タマは安堵するはずだと、不貞腐れるミケに言葉を足す。
「シュンの飯、旨いんだよ。タマもちょくちょく食べに来るくらいには。シュンが居なくなったら、また俺の不味い飯に逆戻りだぞ?」
言葉に、ミケの顔がどんよりと曇った。
こんな反応になるとわかりながら紡いだ言葉だが、あからさまな残念顔に傷つく俺。
ふっと鼻から息を吐き、鬱蒼となる感情を振り払った。
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