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第43話 隠れ蓑

 皺が伸び切っても、お構いなしに突っ込まれ、奥を抉じ開けられる。  きゅうっと締まる孔の中で、オモチャとペニスが擦り合わされ、響く振動が腰を痺れさせた。  逃げを打ったところで、真上から覆い被さった大きな身体に丸め込まれる。  シーツを掻く両手も、這いずる足も、簡単に押さえつけられ、オモチャで嵩増しされた肉杭に、狭い孔の中を好き勝手に小突き回された。  1本ならそこまで潰されるコトのない前立腺をあり得ない形に蹂躙され、突かれる度に潮を吹いた。  イキ続ける身体に、孔は激しく痙攣し続ける。  それが堪らなく気持ちよかったのだろう館野は、イッたにも関わらずペニスを抜いてはくれなかった。  (しお)れないペニスを埋めたまま、一緒に咥えさせられているオモチャで、がさつに孔を弄ばれる。  イキ続けている身体は、優しさの欠片もない愛撫にさえ反応し、館野のペニスに媚び続けていた。  いいだけ僕の身体を犯した肉棒が、ずるりと引き抜かれた時には、閉じられなくなった孔から大量の精液が溢れ出す。  抜かずの3発で吐き出された白濁が、足の間を伝い、シーツをしとどに濡らした。  湿気ったシーツも、汗や体液に塗れた身体も気持ちが悪かったが、起き上がる気力すらなく、暫くの間、汚れたベッドに沈んでいた。  でも行為の最中(さなか)、堪らなく気持ちが良かったのは事実で。  ポチのペニスを咥え、思い出した記憶にあの時の快感が蘇る。  無意識に腰が揺らいでいた。 「断れるようにしてやろうか? お前が客を選べるように」  文句を垂れる僕を気遣うように掛けられたポチの言葉に、ペニスを咥え込んだまま、首を横に振るった。  この娼館の管理をしているのは、ポチが身を置く比留間の系列だ。  ポチは、運営に関わっている比留間の人間を断るコトが出来ないと思っているようだが、それはない。  ここで働いている管理スタッフは、僕たちの味方で、体調不良だとか、休日だとか適当な理由をつけて、守ってくれている。  ポチの口添えがあれば、きっともっと簡単に、無理を強いてくる客は拒否できるのだろうけど、そこまでしてもらわなくても、問題はない。  こめかみから差し込まれたポチの手が、柔らかく僕の髪を梳く。 「そっか……」  まだ頼られるに値しないのかと言いたげに残念がる声は、僕を淋しくさせる。  ポチは、僕を抱かない。  抱けるだけの金を払っているはずなのに、口でヌいてくれれば良いと、僕の身体には触れてこない。  頭を撫でたり、髪を弄ったり、抱き締めたりはしてくれても、欲情を露に貪ったりはしてくれない。  性的対象として男は論外なのだろうけど、僕の身体ではポチを興奮させられないのだと、覆せない当たり前が胸を苦しくさせた。  ……本当は、違った。  シュンを追い出そうとしたのは、タマの為…、なんてのは隠れ蓑で。  シュンに消えてほしかったのは、僕自身。  ポチを、取られたくなかったからだった。  でも、きっと。  そんなコトを言ったって、ポチの心には響かない。  ただ、捨て置けない野良猫に情をかけているだけなんだから。

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