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第49話 停滞する関係

「また、シュンから?」  可愛らしさは薄れたが、色気が増しているタマ。  柔らかな焦げ茶色の髪を靭やかな手つきで耳にかけたタマは、オレの股間から顔を上げた。 「ん? あぁ。人探し……」  子供が出来てから、女を相手にするのが面倒になっていた。  それに加え、娼館での仕事が減ってきたタマは〝お礼だ〞などと理由をつけずに、オレで性欲を解消するようになっていた。 「前から思ってたけど、鸞ちゃんってシュンに甘いよね」  オレの体液と自分の唾液に塗れた口許を真っ赤な舌で舐めずったタマは、微かな不機嫌さを滲ませる。 「スズシロとは、いい関係でいたいからな」  オレのペニスを片手で緩く扱きながら、薄く開いた瞳で淫靡な空気を侍らせたタマの顔がゆるりと近づく。  キスのおねだりだろうその行動に、柔らかく唇を重ねてやった。  舌を差し込もうとするオレの下唇が、かぷりと噛まれる。  腹に溜まる苛立たしさを発散するように、オレに噛みついたタマは、顔を離し、じとりとした瞳を向けてくる。 「なんで手放したの?」  タマの口から、そんな質問が出るなどと思っていなかったオレは、一瞬、言葉を詰まらせた。  オレが好きだと言い続けているタマ。  瞬がオレの傍を離れたコトを、喜んでいるとばかり思っていた。 「あんなに気に掛けて、未だに何かにつけて心配して……」  傍に置いておけば良かったんじゃん…と、タマの呆れ混じりの瞳がオレを見やる。 「あいつは、ここにいるべきじゃない。あいつにはこんな薄暗い世界より、表の…日の当たる世界の方が似合うんだよ」  言っておきながら、心の片隅に冷たい風が吹き抜けていく。 「ふうん……」  聞いた割に興味の無さそうな声を返すタマ。  頬の上を滑べらせ、後頭部へと伸ばした手で、離れてしまったタマの顔を引き寄せる。  物足りない心を埋めるように、唇を重ねた。

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