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第54話 きっとこのまま
ずるりと引き抜かれたペニスを追うように、ジンジンとした痺れを纏う孔から、生温い白濁が、だらだらと溢れ出る。
ぶつけ続けた頭も、体内を流れる血に合わせるかのように、どくんどくんと痛みを放つ。
革の枷に繋がれたままの手首は、擦過傷を伴い、血が滲んでいた。
下着だけを身につけた館野は、動けない僕を放置して、部屋を出た。
数分と経たぬうちに戻り、僕の首に真っ赤な枷を嵌める。
「似合うな」
ははっと嘲ける音で笑った館野に、僕はなんの反応も示せなかった。
首輪から伸びる鎖を壁のリードフックに引っ掛けた館野は、虚ろな僕の頬を数回叩く。
「手錠外すけど、暴れるなよ? 抵抗するなら、ダルマにすっからな?」
わかったかと、再び叩かれた頬に、顔を背けた。
掠り傷がついた手首から枷が外された。
だからといって、動けるだけの体力も気力も残ってはいなかった。
僕の力の入らない手を持ち上げた館野は、傷を見やり、深さを確かめる。
「このくらいなら、問題ねぇか」
ぽいっと僕の腕を捨てた館野は、片方の口角を上げ、嫌な笑顔を浮かべた。
「そのうち客、取ってもらうから。…こんな使い古されたボロ雑巾じゃ、大して稼げそうにねぇけどな」
汚物でも見るような視線を向け、館野はベッドを降りる。
首輪と一緒に運んできたのであろう水のペットボトルが、館野の代わりにベッドの上で転がっていた。
「精々、頑張れや」
ははっと楽しげに笑った館野が扉を潜る。
閉められた扉から、ガシャンっと重い施錠の音が、部屋に響いた。
窓のないこの部屋では、連れてこられてから、どのくらいの時間が過ぎたのかもわからなかった。
「2人でも良いって、マジ?」
僕が繋がれている部屋に、客らしき男を連れ、入ってきた館野は、品物を見せびらかす商人のように、にんまりとした笑みを浮かべ口を開く。
「ぁあ。問題ないよ。フィストもいけるんじゃね?」
比留間の娼館に居たネコだからな、と自慢げに紡いだ館野は、けらけらと軽薄に笑う。
楽しげなその音が、僕の神経を逆撫でする。
だが、どんなに苛立とうと、どんなに悔しがろうと、僕にこの状況を打破できる手立てはない。
きっとこのまま、使い古され、壊され、破棄される。
ベッドの上で座り込んでいる僕の姿を確認した男が、口を開く。
「明日、同じ時間に来るわ」
言葉を紡いだ男は、くるりと背を向け、部屋を出ようと足を出す。
「今日は? 使っていかねぇの?」
なにもせずに帰ろうとする男に、館野は不服げに問いかけ、後を追う。
「ん? ぁあ。もう1人連れてくっから……」
言葉尻を掻き消すように、扉が僕たちの間を遮断した。
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