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第64話 求めているのは、それじゃない

「なぁ。なんで口でしか、させてくんねぇの?」  俺の股間に顔を埋めながら、ぽつりと漏らされたミケの不満塗れの疑問符に、瞳を隠す髪を掻き上げる。  髪の毛を退けた先から覗いたミケの瞳は、物悲しげに俺を見詰めていた。  交差した瞬間、ミケの瞳は、居心地悪げに逃げていく。  れろっと側面を舐め上げた舌が、ちろちろと先端を擽ってくる。 「他のヤツが使ったのは、…嫌、だよね」  他の男に使われたこの身体は、触れる価値などないのだと勝手に解釈し、自分を傷つける刃物のような結論を無理矢理に飲み下すミケ。 「確かに。お前が他の男に啼かされてるって思ったら、ムカついたな」  ペニスの上で蠢くミケの唇に親指で触れ、そのまま口腔内へと侵入させた。  自然と開かされた唇は、とろりとカウパーを滲ませる先端に触れ、口腔内へと誘ってくる。  飲み込まれた先端から溢れた粘液は、ミケの唾液と混ざり合い、その喉奥へと落ちていく。 「……は」  ふるりと震える腰に、ミケの頭を包むように掴んでいた。  きゅっと入る指先の力に、ミケの舌がねろりと先端を可愛がってくる。  窄められた唇に締めつけられながら、竿が口腔内へと飲み込まれていく。  上顎のごつごつした部分を潜り抜け、ぐにぐにと蠢く喉に到達した。  ミケの頭がゆるく揺らぎ、喉奥をコツコツ叩かせる。  奥の狭まりに触れる度、うねる粘膜が俺を虐めてくる。 「ん……ふ、…」  ほんの少しの隙間から、酸素を得ようとする鼻が可愛らしい啼き声を零す。  喉奥で俺を扱き、イカせようとしてくるミケの頭を押さえつけ、腰を引いた。  唾液塗れの肉棒が、ずるりと半分ほど抜け出てくる。  なんで抜いちゃうの? と言いたげな、切なげな涙目が俺を見上げた。 「俺は、家政婦がほしかったわけじゃねぇよ」  ちゅぱちゅぱと俺のペニスをしゃぶるミケの瞳から零れそうになっている雫を指先で拭い取る。  涙を拭いた指先で、俺のペニスを頬張る顔を、するりと撫でた。 「……こうやって、タダで、…処理してもらえるからって、お前を呼んだワケでもない」  もっと奥までと強情るように、ちゅうっと吸いついてくる唇に、そわりと背が痺れた。  思うままに腰を振るい、喉奥に突っ込み、昂るままに吐き出したら、どれほど気持ちが良いかを知っている。  たけど、求めているのは、そんな独り善がりの興奮じゃないんだ。

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