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第66話 ちっちぇプライド

 違う。ミケの解釈も、俺が苛立つコトも、全部間違っている……。  思っているだけで、伝わる……ワケなんてない。  余るくらいの率直な想いを言葉にして伝えなければ、俺の心意などわかるワケがない。  ミケだって、エスパーではないのだから。 「俺が買ってる時間くらい、休ませてやりたかったんだよ」  濁さずに、俺が考えていたコトを紡いだ。 「余計なお世話だったとしても、恩着せがましいと思われたとしても、それが俺が出来る精一杯だったんだよ」  言葉にミケは、なんともいえない表情で、俺を見ていた。 「こっちに来てからも手を出さなかったのは、……タイミングってぇか、きっかけが掴めなかっただけだ」  意気地無し、だっただけ。  俺のペニスに興味を示し、咥えたがるミケ。  でもそれは、抱かれたがっているようには見えなくて。  いざとなったら、拒まれてしまいそうで。  拒まれるのが嫌だから、まるで慈悲でも与えるかのように前を寛げ、しゃぶらせていた。  俺の興味も興奮も、ひた隠しにして。  考えれば考えるほどに、臆病で見栄っ張りな自分が浮き彫りになってくる。  こんな情けなくて恥ずかしい自分は、隠しておきたいところだが……。 「ちっちぇプライド守ったところで、なんになるって話だよな」  はっと空気を切るように、息を吐いた。  空気と一緒に、うだうだしている自分を吐き捨てる。  目の前で、俺の言葉を半信半疑で聞いていたミケをぐっと抱き寄せ、首筋に顔を埋めた。  俺の両手は本能のままに、ミケの尻を、むにゅりと掴み、揉みしだく。 「……っ、なんだよっ」  首許に擦り寄る俺の顔を剥がそうと、ミケの手が頭に爪を立ててくる。  れろりと首筋に舌を這わせる俺に、ミケの身体が、ぶるりと震えた。 「お前の身体に、興味がないワケねぇだろがっ。どっこも汚ぇなんて思ってねぇし……。もう、抱くっ」  話をしているうちに、若干大人しくなってしまった息子だが、ミケの柔らかい尻の感触と舐めた首筋の甘さに、簡単に硬さを取り戻す。 「お前を気遣ってとかじゃねぇから。俺がヤりてぇから、ヤるだけだから。汚ぇと思ってたら、こうはならねぇだろ」  ミケの手を掴み、反り返り涎を(たら)し始めたペニスを掴ませる。 「わかったか? 俺はお前が、好きなの。お前の身体に、興奮してんだよ」  握らせた手に擦りつけるように、無様に腰を振るった。 「もぉ、わかった。わかったって」  性欲剥き出しで腰を振るう俺よりも、中途半端な平常心を抱えているミケの方が、羞恥に負ける。  不貞腐れながらも、俺の言い分を聞いてくれたミケの頭を、わしゃわしゃと褒めるように撫で回した。 「なんなら、俺がしゃぶってイカせてやろうか?」  ミケの股間に手を伸ばし、玉ごとやんわりと握ってやる。  御馳走を前にしたかのように、自身の唇をべろりと舐め上げた俺の瞳に、ミケの白々しい顔が映る。 「下手くそなクセに。ポチのフェラなんかじゃ、イカないしっ」  優越感の滲む余裕の笑みを浮かべたミケは、テクニックでは負けないと俺のペニスを、きゅっと握ってくる。 「勝負だな」

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