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第79話 二の舞は避けたい
スズシロの恩恵に与 るつもりもないのに、柵だらけの面倒そうな郭遥に近づく意味がわからないと、タマは唸る。
「普通に、惚れたんじゃねぇの?」
白い肌の上、ぷくりと膨らんでいる乳首を指先で擽りながら紡いだ言葉に、タマは冗談めかしに両腕で胸許を隠し、腰を捻り逃げる。
素直に考えれば行き着くであろうオレの言葉に、タマの苦虫を噛み潰したかのような顔が返ってきた。
「そっちの方が厄介だね。何回も会ってるみたいで、郭遥も満更でもなさそうだし」
仕返しとばかりに、そこだけが曝け出されているオレの逸物を指先でツンツンと突っつくタマ。
タマに弄られたところで、くたりと垂れ下がったペニスは、反応を示さない。
「足りなかったか?」
溢れるほど注がれ、足りないなんてコトはないとわかりながら、意地悪く聞いてやる。
「僕のお腹は、いっぱいだよ」
よく頑張りましたとでも言うように、タマはにこにことオレのペニスを撫でてくる。
「……追っ払わなきゃいけなくなるんじゃないかなって思ってさ」
追っ払うの言葉に、瞬が傷つきながら愁実を遠退けたコトを思い出す。
また瞬が、嫌な役を押しつけられるのか。
「まぁな。郭司に見つかったらそうなるわな……」
愁実の二の舞になりそうな案件に、頭が痛くなる。
「スズシロの御曹司が男と不倫なんて話になったら、世間も放っておかないだろうしね」
「その辺の記事はたぶん、出版社ごと握り潰すだろうけどな」
郭司のコトだ。
スズシロのブランドのためなら、その辺の企業のひとつやふたつ簡単に捻り潰してしまうだろう。
「裏では事件屋名乗ってるくらいだから、頭は切れる方だと思うんだよね。そんなヤツが、スズシロを売るような馬鹿なコトはしないと思うけど、釘は刺しておいた方がいいかもよ」
郭遥と三崎の関係性も探っておいた方が、事が起こった時に対処がしやすいだろうと、タマは含みのある言い方をする。
「そうだな。ポチにでも……」
「止めた方がいいよ」
いつものように雑多な事柄をポチに任せようとするオレに、タマの〝待った〞がかかった。
「郭遥と友好関係にあるサキに、比留間が接触するのは、良くない」
止めておけと、首を振るうタマ。
三崎と比留間も繋がっているとなれば、無駄に藪を突っついてくる輩が現れないとは言い難い。
「シュンに行ってもらいなよ。サキの思惑もわかるだろうし、矢面に立つのはシュンだろう? 内情をわかってる方が、対処のしようもあるでしょ」
確かに。瞬は、表向きスズシロの人間だ。
郭遥と三崎が繋がっているのなら、スズシロの秘書が接触したところで、下手に勘繰られるコトもないだろう。
「そうだな」
「シュツジツの方は、僕が見張っておくよ」
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