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第97話 佐鮫、再び
溜め息と共にオレの元を訪れたタマは、悄気た声で、自分が落ち込んでいる理由を告げる。
「ごめん。愁実、佐鮫に持ってかれた……」
綺美メディアを潰すコトで、上手くいけば愁実を解放してやれるかもしれないと踏んでいたが、そうは問屋が卸さなかったらしい。
「今度は、佐鮫かよ……」
ポチと出会った時に、潰した〝佐鮫〞は、末端の、さらに一角に過ぎなかった。
広く、浅く、金になりそうなシノギを手当たり次第に噛る佐鮫。
本家らしき目立っている所帯を潰したところで、次点で控えている奴らが〝佐鮫〞を名乗り、台頭してくる奴らのシステムは、厄介でしかなかった。
「愁実の傍を彷徨 いてた黒藤 っていうヤツが、愁実を使って佐鮫に取り入ったみたいなんだよね」
愁実の身柄を使い、上手いコト佐鮫の所に潜り込んだらしい黒藤に、いいように使われてしまったとタマは口惜しむ。
「仕事面は良くなったとは言えないけど、事務所の一角で寝食してたコトを考えたら、アパートに住まわされてるし…少しはマシになったのかも、だけど……」
ふぅんと、鼻から悩ましげな息を吐くタマ。
「深追いしても、良い方には転ばなさそうだな……」
零すオレに、タマは眉尻を下げてくる。
「黒藤もあんまり良い噂、聞かないんだよね。佐鮫の組織に服従するつもりは、ないっぽいし……。潰したところで、また黒藤に使われるくらいなら、静観する方が無難かもね」
愁実を囲っている佐鮫が有するメディアを潰したところで、また黒藤に違うメディアへと連れていかれるコトが予測された。
それならば、前よりはマシになった環境で妥協しておくべきなのだろう。
一致した見解に、これ以上の手出しは無用だと判断した。
数日後。タマからの報告で解ったのは、黒藤という人間は、事件屋紛いの仕事をして生計を立てている半グレと呼ばれる部類の人種であるというコトだ。
三崎と同じく、それなりの分別があり、比留間に噛みついてくるようなバカな振る舞いはしないだろうと、タマの言う通り静観していた。
愁実が事務所を移ってから2年。
平穏というほどではないにしろ、大きな事は起こらず、時間は過ぎていった。
そんな折、三崎が事件屋を辞めたらしいと、タマから連絡が入った。
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