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第98話 詰まる息
スズシロをめぐる雑多な諍いを、静かに片付けていた三崎。
そんな三崎が事件屋を廃業したとなれば、木っ端が沸いてくるかもしれないと、瞬に注意を促そうと連絡を取る。
「三崎が事件屋を廃業したそうだ」
知ってたか? と確認するオレに、瞬は否定する。
「いや。それどころじゃなくて……」
辛気臭い声色で紡がれた言葉に、オレの眉根が寄った。
「……郭遥さまに、DNAの鑑定結果を突きつけられたんだ」
〝DNA〞の言葉に、2人目の息子の素性が暴かれたのだろうと察した。
呼吸のために吸い込んだ空気が、喉を詰まらせる。
瞬時にオレの頭を占めたのは、瞬や息子の身の安全をどう確保するべきかというコトだった。
脳をフル回転させるオレの耳に、入ってきたのは、ゆるりとした瞬の声だ。
「なのに、郭遥さまは咎めないって……」
続いた瞬の言葉に、オレの思考は停止する。
「どういう…、コトだ?」
絞り出した声は、オレのものとは思えない掠れた音で、現状を理解出来ていないコトを瞬に伝えた。
「今まで通りで構わない、と。遥征さまもそのまま自分の子供として育てるって。俺には、澪蘭さまを支えろって……」
どうやら、郭司の耳にまでは届いていないようだと察した。
今すぐに対処しなくてはいけないほど、切羽詰まった状況ではなさそうだと、詰めていた息を吐き出した。
「郭遥さまも、わかっているんだと思う。当主の怖さ……。俺はどうなっても良いとしても、息子……俺の子供だけど、…でも、そんな小さな命が消されるのはあまり気持ちの良いものじゃないだろう…?」
確かに、瞬の考えは一理ある。
切々と紡がれる瞬の言葉に、俺は耳を傾け続けた。
「郭遥さまを貶 めようとしてやったコトじゃないし、俺の立場を考えたら、澪蘭さまから誘われたら、断るのは無理だろうって……」
はあっと重く息を吐いた瞬の言葉は、続く。
「2度目はないって釘は刺されたけど、それは当たり前のコトだし……本来なら1度だって許すべきじゃない……」
瞬の声音からは、自身の安全が保たれたコトへの安堵より、自分の行いを看過する郭遥の甘過ぎる対処への苛立ちが勝っているように思えた。
「三崎にかまけて、澪蘭を蔑 ろにしてたんだ。あいつだって、強くは出れないだろうよ」
妻である澪蘭を放ったらかし、愛はないとしても三崎との逢瀬を重ねていたのだから、強くは出られないだろうと紡いだオレの言葉に、瞬は溜め息混じりの肯定を返してくる。
「もう耐えられなくて……、白状したんだ」
何を? と空気に混ぜて問うオレに、瞬の言葉は続く。
「愁実が、金を受け取ってないって、暴露しちゃったよ……」
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