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第115話 最上の褒美
1枠から始まり、4枠までの試合が終わる。
どうやら勝ち抜き戦のようで、ステージには3枠の男が残っていた。
本命と言われた5枠のマルが、ステージへと上げられた。
マルは、拘束衣で左手の自由を奪われた状態で壇上にあがった。
武器もなく、さらに片腕を封じられた状態のマルの姿に眉を潜めた。
土下座でもするかのように床に這いつくばり、男に背を踏みつけられた状態から、マルの試合は始まった。
試合前、精気のない真っ黒な暗闇のようだったマルの瞳が、開始と共に、ぎらりとした異様な光を放った。
男の下からするりと抜けたマルは、そのまま足を払いにかかる。
「あのコは強すぎて……。だから、ああして利き手を封じ、あの状態から試合を始めるしかないんです」
声に向けた瞳の先で、ステージを見やったままの白藤は、困り顔の笑みを浮かべる。
ゴッと鈍い音が響き、ステージへと視線を戻した。
男が振り上げた鉄パイプが、ガードのために上げたマルの右腕を殴打していた。
「あいつ、また勃起してやがる」
隣のブースから、嘲笑う声が響いてくる。
声に誘われ向けた瞳の先、マルのハーフパンツの股間部分が、あからさまに盛り上がっていた。
それは、命の危機に子孫を残さなければと本能が反応しているかのようだった。
普通なら、戦いの最中にそんなコトを考える余裕などない。
自分の命のために、痛みから逃れる方法を探り、相手を打ちのめすコトに神経を集中させる。
だが、マルの戦いに切羽詰まった空気は微塵もなく、頭は空っぽで、身体が勝手に戦っているようだった。
気づけば、マルの相手はステージの上に沈んでいた。
リングに立つマルの息遣いは荒い。
だがそれは、疲弊からくるものではなく、昂る神経を落ち着かせるための深呼吸に見える。
「あのコに、会えないか?」
戦闘による興奮がアドレナリンを分泌させ、息が荒くなっているだけなのだろうが、まるで痛みで欲情しているような姿が俺の心を擽った。
「興味がおありで?」
白藤の笑みは、下衆な色を纏っていた。
「あのコは、痛みすら快楽に変えてしまうんです。いや、苦痛が最上の褒美といった方が正解かもしれませんね」
くつくつと笑う白藤に、気色の悪さを感じた。
「今日も勝った褒美を与えるんですが、礼鴉さまから与えてもらえますか?」
下品な空気を隠しきれていない白藤の顔がにやりと歪む。
「褒美?」
金か、食い物か、その程度のものだろうと思ったが『苦痛が最上の褒美』と言った白藤の言葉が引っ掛かった。
「鞭か…、ピンチか……平手でも喜びますよ」
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