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第122話 時間を引き伸ばすために
白藤が消えた空間で、マルがすっと腰を落とした。
先程の試合相手のように足を払われるのではないかと1歩引いた俺を、きょとりとしたマルの瞳が見上げてくる。
「舐めさせて下さい。僕に、御返しをさせて下さい」
正座の形で足を折り畳み、口を大きく開いて舌を垂らす姿は、まるで指示を待っている犬のようだ。
喉の奥まで、ぽっかりと開いた空間はマルの息遣いに合わせ、ひくひくと蠢く。
「試合に勝った褒美なんだろ? 俺に礼なんて必要ない」
舌を引っ込めろと、揺れる舌先を指先で擽った。
ゆるりと戻った舌は、緩慢に閉じた口の中に隠される。
考えを巡らせるかのように、マルの瞳が右へ左へと揺らいだ。
「……なに?」
「褒美をもらうだけだと、あっという間に終わってしまう、……から」
申し分けなさげなマルの瞳が、俺を見上げる。
「僕の喉を使ってもらえば、少しは長く……」
言葉を切ったマルは、ふるふると頭を振るった。
「いえ。ごめんなさい、なんでも…」
ありません、と続くはずだった言葉を、その唇に押し当てた親指で止めた。
指先に力を入れ、マルの赤く色づいている唇をぐにゅりと押し潰す。
口腔内へと侵入した俺の指に、ねっとりとした生温かい感触が絡みついてきた。
「喉を虐めてほしいってコト?」
俺の問いを肯定するかのように、ちゅうっと指先が吸われる。
マルの舌を擽る指先はそのままに、片手で前を寛げた。
まだ、くたりと垂れ下がったままのペニスを引き摺り出す。
ぼろりと零れ落ちるように顔を出したそれに鼻先を近づけるマル。
「く、…らさい……」
口の端には俺の親指が引っ掛かったままで、舌足らずに強情ってくる姿に、そわりとした熱が身体を炙った。
ねっとりとした唾液に塗れた指を、マルの口から引き抜いた。
繋がる銀糸は水滴を作り、重力に引かれ、ぷつりと切れる。
「どうぞ」
腰を突き出す俺に、目尻を赤く染めた淫靡な表情を浮かべたマルの顔が近づく。
伸ばした舌先をペニスに触れさせたマルの瞳が、俺の顔色を窺ってくる。
「しゃぶっていいよ」
ゆるりと瞬いたマルは、ぱかりと口を開き先端から柔らかいそれを飲み込んでいく。
むにっとした感触が、ゆるゆると俺のペニスを刺激しながら食んでいく。
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