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第126話 その要因は < Side タマ

「あいつらの計画、そろそろ軌道に乗ったか?」  つらりと放たれた礼鸞の言葉に、游ぐ瞳を押さえつけながら、平然とした顔を向けた。 「あいつらの、計画?」  (とぼ)けて見せる僕に、白々しいと礼鸞の瞳が細くなる。 「オレが知らねぇとでも思った?」  舐めてもらっちゃ困ると、礼鸞の肩に預けていた頭が、わしゃわしゃと捏ねられた。 「内密で動いてたつもりだろうけど、お前の動向は全部筒抜けなんだよ。秘密倶楽部JOUR、始めたんだろ?」  秘密を知る者は少なければ少ない方がいいと、あえて知らぬフリをしていたのだと、礼鸞は僕に、白い目を向けてくる。  比留間が運営していた娼館とは、格が違うJOUR。  軌道に乗る頃を目処に、いっちょ噛みしてやろうと画策していたらしい。  どんな感じなのだと視線で詰めてくる礼鸞に、はあっとお手上げの溜め息を吐いた僕は、JOURの存在を暴露する。 「スズシロと付き合いのあるトップクラスの紳士が相手だから、品格の高い風俗って感じかな。……中身は、ダーティこの上ないけどね」 「郭司にバレるのも時間の問題かもな」  トップクラスの人間が相手だとしても、人の口に戸は立てられないだろうと紡がれた礼鸞の言葉に、僕は再びの溜め息を零した。 「郭司には、もうバレてるよ」  JOURを利用した一流企業の御偉方は、秘密厳守だと堅く言いつけられたはずなのに、そんな場所を知っている自分は凄いのだと自慢したくて仕方なかったと見える。  だが、新たに情報が漏れるコトはない。  約束を守れなかった人間は、もうこの社会に存在しない。  郭司にバレているのなら、潰れるのは目前だろうと、ハイエナのごとくその座を掻っ攫おうと礼鸞の口角が、くいっと持ち上がった。 「ちょうど良い貸しもあるし、比留間(うち)が貰い受けるか」 「残念ながら潰れないよ」  言葉に、礼鸞の怪訝な瞳が僕を見やる。 「シュンが上手いコト言い包めたみたい。だけど、相手は郭司だからね。油断ならないって、郭遥の所を離れて、郭司の所に戻ったらしいよ」  今、郭遥の傍には比留間の人間が居ないんだよね…と、呟く僕。  なかなかの切れ者に育ったシュンに、礼鸞は勿体ないコトをしたと小さく舌を打つ。 「誰か、……礼鴉をJOURに捩じ込むのも手なんじゃない?」  思った以上の盛況ぶりで、キャストも管理も足りないって話だし、と言葉を足した。  僕の口から放たれた礼鴉の名に、礼鸞の動きが止まった。  いつも険しい顔つきが、更なる暗さを纏う。 「あいつの悪趣味は、オレのせい……かもな」  重い音で紡がれた言葉は、後悔に塗れていた。  礼鸞は、息子の礼鴉の性癖が、特殊なものだと勘づいていた。  礼鴉の嗜好が捩じ曲がってしまったのは、子供に興味が持てずに、碌にかまってやらなかった自分のせいなのではないかと悔いていた。

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