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第133話 黒藤との繋がり

 20歳の頃から籍を置いていたクラルテファイナンスに加え、JOURという完全会員制のゲイ風俗での仕事も追加され、1年が過ぎた。  比留間が見つけてきたキャスト候補の資料を、愁実の元へと届け、需要のありそうな人材をピッアップしてもらっていた。  営業前の夜の8時。  スズシロのビル1階にあるバーのカウンターに資料を置いた。  客のようにスツールに座る俺の前で、カウンターの向こうから、バーテンダーの愁実が拾い上げた資料に目を通していく。 「このコ……」  質問をしようとする愁実の言葉を遮るように、ブーッと鈍い振動音が鼓膜を揺する。  音の出所は、俺のジャケットの胸ポケットだった。 「出ていいよ」  ちらりとポケットへと視線を向けた愁実は、着信を知らせるスマートフォンに、受話を促す。  引き出したスマートフォンのディスプレイには、白藤の名が表示されていた。  どうせまたいつもの連絡だろうと、電話に意識を割きたくない俺は、あえてスピーカーモードで電話を取る。 「もしもし。今、忙しいんだけど……」 「では、手短に。今夜、マルが出ますよ」  スマートフォンから響いた声に、瞬間的に愁実の眉が潜められた。  スピーカーモードで取ったコトが予想外だっただけだろうと、俺は気にせずに通話を続ける。  格闘場に通い始めて2年近く。  マルが出る試合がある際は、こうして連絡を寄越すようになっていた。  毎度の事ながら、いらっしゃるでしょ? と、来るのが当然だという白藤の物言いは、命令されているようで、じわりとした腹立たしさを生む。  マルの試合の度に連絡を寄越す白藤の呼びつけるような態度は、不快でしかない。  だが、白藤を通さなければマルに会うコトすら儘ならないのが現状だった。  あの場所に行ったからといって、俺は賭け事はしていない。  賭博を楽しむために行くのではなく、マルへ褒美を与えるために赴いていた。 「今夜は行けるか、わからない」 「そうですか」  残念そうに紡がれる声は、うわべだけに塗られたメッキのようなものだ。  わからないと言いながらも、マルに会うために貴方は来るんでしょ? と、腹の中で嗤っている空気が電話越しでも伝わってくる。 「切るぞ」  白藤の返答を待たずに、俺は電話を切った。  待たせたコトを謝ろうと口を開きかけた俺に、愁実の堅い声が響いた。 「礼鴉。君は黒藤と繋がってたんだね」 「……黒藤?」  急に黒藤の名が挙がったコトに、虚を突かれた。 「知ってるだろ。郭遥は、黒藤の処理を比留間に頼んだはずだ」  勿論だ。黒藤は知っている。  だけど、繋がってた……?

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