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第146話 マルとペケの住み処
黒藤を連れて帰った俺に、礼鸞はあからさまに嫌な顔をした。
「また持って帰ってきたのかよ?」
「オレは、その場で処分するつもりでしたよ」
呆れ返る礼鸞に、園田が面白くなさげな声を立てる。
「消してやろうとしたら、柴田さんに止められました」
まるで小さな子供が思い通りにいかずに癇癪を起こすかのように、むすっと顔を歪める園田。
「あんなところでぶっ放したら、後々、面倒になるだろっ」
柴田が言う〝あんなところ〞とは、間口の開けたオーナールームだ。
黒藤とマルとペケを連れ、園田の待つ部屋へと戻った俺たち。
用は済んだのだろうと、間髪入れずに黒藤へと園田の持つ銃の射出口が向けられた。
園田が構えた銃に手を掛けた柴田は、それを観客席からは死角になるよう、上手く下げさせ、面倒事を増やすなと一喝を入れ黙らせる。
黒藤の処分保留と、マルとペケを連れ帰るコトを簡素に伝える柴田に、園田は、チッと盛大な舌打ちの音を響かせた。
「逃げ隠れするコトに疲れて、終らせたいと思っているヤツを殺ったって、黒藤本人が喜ぶだけだろ」
疲れ混じりの声を放つ俺に、園田の顔は晴れない。
「それに、今は気づいてないけど、いつか黒藤があいつらにした仕打ちに気づいて、自分たちで復讐したいって思ったときに、その矛先がもう存在しないってなったら、悔やんでも悔やみきれないと思ったんだ」
殺るなら自分の手で、殺りたいだろ? と紡ぐ俺に、園田の不服げな声が被る。
「オレは、納得してないっすから。こんなの、河堀の二の舞じゃないっすか……」
息の根を止めないのは甘すぎる、と園田は溜め息を吐く。
河堀の件で嫌な思いをした園田が、良い顔をしないのは当たり前だ。
「今回は主犯格を捕らえてんだから全然マシだろ」
園田の言葉をあしらうように、柴田の言い分が紡がれた。
「そうやってすぐ坊を甘やかす……。オレは、今すぐにでもあいつの頭、撃ち抜いてやりたいっすからね」
ギリギリと奥歯を鳴らす園田に、柴田は小さく笑った。
「そう、カリカリすんな」
園田を宥めにかかった柴田は、笑みをにんまりとしたものに変える。
「あそこはお前に任せてやるから。それなりにいいシノギになるんじゃねぇの?」
これで手を打てというように、園田の肩に手を回し、ぽんぽんと叩く柴田に、うぐぐっと詰まる音が返った。
「こんなんで、騙されないっすからねっ」
むすりと顔を歪めながらも、承諾の意を示す園田に、柴田のにんまりとした笑みが深みを増した。
「黒藤は、オレの監視下において、こき使うか」
柴田に負けず劣らずの嫌みな笑みを浮かべた礼鸞は、楽しげに話を終結させた。
礼鸞の監視下に落ちたとしても、黒藤の口が達者なコトは変わりなく、マルたちと黒藤の接触が完璧に防げるはずもない。
そんな環境下に、彼らを住まわせるのは、良くはないと感じた。
マルとペケを比留間の屋敷に置くコトに懸念を示した俺に、礼鸞はJOURの名を挙げる。
外に出せないようなヤバい奴らを囲っているJOURならば、マルとペケの衣食住くらいならなんとかなるだろうと話を通してくれた。
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