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第147話 僕たちの居場所 < Side マル

 礼鴉に連れ帰られ、JOURという完全会員制のゲイ風俗店の一角に、僕とペケの部屋が用意されるコトになった。  黒藤のところから引き上げてきたと説明する礼鴉に、JOURの管理者だろう愁実という男が、僕たちを部屋へと誘う。  僕たちが礼鴉の家へと連れ帰られた時、白藤として認識していた人物の本名は、黒藤だと教えられた。  でも、名前など、どうでもよかった。  黒藤の〝もう、要らない〞という言葉は、僕にとっての死刑宣告だった。  捨てられないようにと、必死に頑張ってきたのに、たった一言であっさりと消滅させられる虚しさに涙が零れた。  僕たちは、存在が証明されていない透明人間だから。  必要とされなければ、ゴミとして捨てられる運命で。  明日には、使える中身をくり貫かれ、捨てられるかもしれないと怯える日々だった。  そんな心配をしなくていい場所をくれたのが黒藤だった。  痛くても、辛くても、苦しくても、そこが僕の……僕とペケの居場所だった。  新たに現れたあの男、柴田に居場所を奪われたのだと思った。  もともと存在しない僕の命も、ペケの命も、無かったものとして消えてしまう。  自由になれたのだから、良かっただろうと紡がれる言葉に、諦めの思いが胸に広がった。  僕たちにとっての〝自由〞は、消えるコトだから。  居場所を奪われた僕は、どうすればいいのか、わからなかった。  僕をやる気にさせるためにと買われたペケまでも一緒に消されてしまうのが、堪らなく申し訳なくて。  せめて、ペケだけでも助けてほしいと願うコトしかできなかった。  僕たちは消えたりしないという礼鴉の言葉は、不思議なものだった。  存在しない僕たちは、この世から消えたところで誰も困りはしないはずなのに、悲しむし怒るという礼鴉の考えを理解するコトは難しい。  だけど、居場所を与えてくれるのなら、僕は礼鴉の傍にいるしかなくて。  案内された部屋は、スズシログループのビルの地下1階だった。  4畳ほどのワンルームで、出入口の横にユニットバスがあり、キッチンはない。  食事は、同じ地下1階にある食堂で食べられるからと教えられた。  シングルサイズのベッドとテーブルも備え付けで、動かすことはできない。  部屋の奥には小さなクローゼットがあり、数着の服がしまわれていた。 「ここはマルの部屋。隣にペケの部屋を用意してある。足りないものがあったら、遠慮なく言ってくれていいよ」  柔らかく声を放つ愁実に、ペケと繋がっている手が、きゅっと握られた。  不安に駆られているペケは、ずっと僕の手を放さない。

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