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第148話 思ってもみない仕事
「一緒がいい……」
ぼそりと漏れたペケの声に、礼鴉の不思議そうな瞳が落ちてくる。
「狭いでしょ?」
シングルベッドだけでも部屋の半分を占拠しているような室内に視線を走らせた礼鴉に、ペケはぶんぶんと頭を横に振るう。
イヤだ愚図る子供のようなペケに代わり、僕は口を開く。
「大丈夫。前に比べれば、ずっと良いから。僕もペケと一緒がいい」
今まで与えられていたのは、大人数で雑魚寝するような大部屋や、もっと狭くてベッドもなにもない殺風景で小さな部屋だった。
それに比べれば、ベッドやクローゼット、机までが完備されているこの部屋は、待遇が良すぎるぐらいだ。
「そう。じゃあ、あとでペケのために用意してある物、持ってきて」
自分たちで出来るでしょ? と問うてくる愁実の瞳に、僕は頷く。
「それじゃ、これからの話をしようか」
壁に身体を預けるように佇み、口を開く愁実に、ぴりっと空気が引き攣れる。
「とりあえず、座りな」
視線でベッドを指す礼鴉に、ペケを奥に座らせ、隣に腰を据えた。
〝ゲイ風俗〞というくらいだから、僕らはここで身体を売るのだろう。
傷だらけで貧相で…、おまけに拘束してもらわなければ、手が出てしまうような僕では、使い物にならないのではないかと、懸念する。
不安塗れの瞳を向ける僕に、愁実は礼鴉へと視線を投げた。
「礼鴉。君は、どうするのがいいと思う?」
「マルに警備員として動いてもらうのが良いんじゃないかな。マルの強さは、他の追随を許さないレベルだから」
こちらを見やる礼鴉に、僕はぽかんとした顔をするしかなかった。
「けいび……?」
唖然とした空気を纏う僕の前に、礼鴉はゆるりとしゃがみ込む。
「そ。……客を取らされるとでも思った?」
ふふっと堪えきれないというように笑みを零した礼鴉は、言葉を繋ぐ。
「マルに、…ペケにも、キャスト……男娼をさせるつもりはないよ。だけど、衣食住を提供してもらうからには対価を払わないとだし……それなら、ここを守ってもらうのが最善かなと思ったんだけど」
どうだろう? と首を傾げてくる礼鴉に、僕は瞬きを繰り返す。
「警備の仕事上でも、キャストを傷つけるのは、ご法度だ。気に入らないコトがあっても、手を出さずに我慢出来るか?」
落ちてくる愁実の問い掛けに、僕は首を縦に振るった。
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