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第150話 衝動的に掴んでいた
「むさ苦しかったんだ」
溜め息紛れの声を零した礼鴉は、独白でもするかのように言葉を繋ぐ。
「柄の悪いごつい男ばかりに囲まれて、嫌気が差してた。だから、こうして君の頭を撫でて癒されたい」
目蓋が持ち上がり、礼鴉の視線が帰ってくる。
毛先に触れていた手が、ふわりと持ち上がり僕の頭を撫でた。
「君たちの存在を証明するために、俺は傍に居ると約束した。だから、このくらいの迷惑は、目を瞑ってくれないか?」
首を傾げる礼鴉に、小さく頭を振るった。
「迷惑、じゃない」
ぼそりと放った声に、礼鴉はほっとしたように僕の髪を摘まみ落とす。
するりと滑った礼鴉の瞳がペケを捉えた。
「ペケは、……」
僕の横で小さくなっているペケは、未だに礼鴉への警戒心を消していない。
僕の髪を弄りながらの礼鴉の視線にすら、ペケはその身を縮こませる。
僕は、ペケを安心させようと、繋いだままの手に力を入れる。
「ペケに仕事をさせるのは、もう少し落ち着いてからでいいよ。マルも今日はゆっくり休みな」
僕たちの緊張が伝わったのか、愁実が柔らかな声を落としてきた。
「礼鴉は仕事。そろそろモニタールームに行って」
僕の前でしゃがんでいる礼鴉の背を急かすように軽く叩いた愁実。
「ん、ぁあ」
もうそんな時間かとでもいうように腰を上げた礼鴉は、出入口の扉へと顔を向ける。
僕の髪に触れていた手が離れ、礼鴉の視界からも外れてしまう。
取り残されてしまったような感覚に、物悲しさが胸に広がった。
「ぇ……?」
驚き振り返った礼鴉の瞳が、僕に向く。
僕は、無意識に礼鴉のジャケットの裾を掴んでいた。
衝動的に掴んでしまったコトに自分でも驚きながら、言い訳を探す。
「ぼ、でぃガード、だから。一緒に……」
不審感の拭えない僕のたどたどしい話し方に、愁実は小さく息を吐く。
「警備をするにしても、建物の造りを知らないと動きにくいだろうし、明琉にも会わせておいた方がいいか。連れてっていいよ」
仕方ないなという空気を醸した愁実は、体よく僕たちを部屋から出す。
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