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第151話 ぞわりとした不快感
スタスタと歩く礼鴉の歩調に合わせ、周りに気を取られゆっくりになるペケの手を引きながら、たまに小走りしつつ後を追う。
礼鴉の視線は、周りを観察するかのように忙しなく動き、あまり僕たちには向けられない。
礼鴉と一緒に部屋を出ようと腰を上げる僕の手をペケは放さなかった。
不安がるペケを部屋に置いて出るわけにも行かずに、そのまま一緒に連れ出した。
少し空いてしまった距離を詰めようと早足で近づいた瞬間、礼鴉が足を止め、振り返った。
「ごめんね。異変がないか確認しながら歩くのがクセになってて……」
悩ましげに眉尻を下げた礼鴉は言葉を繋ぐ。
「そこまで入り組んだ設計じゃないから、迷うコトはないと思うけど……」
空いている僕の手を掴んだ礼鴉は、遠慮気味にジャケットの裾へと導く。
「掴んでてくれると、ついてきてるのがわかるから、ありがたいんだけど」
素直にそこを掴んだ僕に、礼鴉は再び歩みを進め、辿り着いた部屋のドアを開ける。
そこでは、1人の男が大きなモニターに映し出された6分割の映像を眺めていた。
「悪い。遅くなった」
礼鴉の声に男の瞳が、ちらりとこちらを向く。
一度は画面に戻った視線が、再び僕らへと戻り、誰? と視線が問うてくる。
疑問符を浮かべるその瞳に、礼鴉はゆるりと口を開いた。
「部屋に置いてこようと思ったんだけど、まだ精神的に不安定でね……」
目の前の男から僕たちへと滑った礼鴉の視線が僕からペケへと流れる。
「こっちがマルで、そっちがペケ」
僕たちの名を伝える礼鴉に、男は不思議そうにこちらを見やっていた。
「潰した闇カジノの地下闘技場から引き上げてきたんだ。戸籍もちゃんとした名前もなくて……でも、呼び名がないのは困るだろ? あそこで使われてた呼称だけど、このコたちも呼ばれ慣れてると思うし……」
急に現れた普通ではない名前の僕たちでは、男が戸惑うのも無理はない。
「キャストにするの?」
値踏みするような遠慮のない視線に曝され、居心地の悪さを感じた僕は視線を逃がす。
「いや。マルはボディガードとして傍に置く。こう見えて、すごく強いんだ」
ぽすんっと僕の頭に礼鴉の手が乗り、わしゃわしゃと混ぜられた。
「ペケは?」
男の声に、僕は無意識にペケの手を引き、背に隠す。
「マルが、離れたがらない。2人とも俺が面倒見るしかないと思ってる」
ちらりと落とされた礼鴉の瞳は、心配するなと僕を見ていた。
隠したつもりのペケを覗き込んでくる男。
「可愛い顔してんね?」
軽く放たれるその言葉が、僕の心を炙ってくる。
〝オジサンたちの玩具になってもらおう〞と、話していた黒藤の声が蘇り、ぞわりとした不快感が背を撫でていく。
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