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第157話 自惚れてもいいのだろう < Side 礼鴉
「僕は良かったと思ってる。礼鴉に会えて、礼鴉が拾ってくれて、傍に置いてくれるようになって……」
微かに色づくマルの頬。
可愛いコトをいうマルに、心臓がどくりと鳴った。
マルは、俺が拾った。
だがそれは、奴隷としてじゃなくて。
黒藤との間にあった関係とは無縁のものだ。
俺はマルを支配したい訳じゃない。
だから、我慢を強いるつもりもなかった。
マルに辛い思いをさせた赤い麻縄など見たくもないだろうと、交換や補充の仕事は自分でこなすつもりだった。
目の前に転がり落ちてしまった赤い麻縄を手にしたマルは、それを俺へと差し出してくる。
縛ってほしいという言葉までつけて。
マルは自由の身なのだから、無理はしなくて良いと告げた。
常に支配し、常に虐げたい……訳じゃなくて。
苦痛に歪みながらも快楽に堕ちていく様に興奮するのであり、マルの全てを掌握し操作したい訳じゃない。
痛みや苦しさに歪む顔に興奮するという性癖は否めないが、マルが黒藤を想っているのなら、その仲を裂きたいとか、離れさせて強引に振り向かせようとか……そういった我を通すつもりもなかった。
俺は、蚊帳の外から眺めるしかないのだと思っていた。
でもマルは、黒藤への想いを否定した。
黒藤のコトを考え眠れないのかと思っていた俺の推察は、お門違いだった。
ただ、躾られた身体が眠りを妨げていただけで、黒藤とは関係がないというマルの言葉に、嘘は無いのだろう。
俺の傍に居おいてもらえて良かったと頬を赤らめるくらいなのだから、自惚れてもバチは当たらないはずだ。
JOURの営業時間が終わり、マルと共にプレイルームとなっている個室へと向かう。
なんでも揃っていて、防音も広さも申し分のない部屋。
愁実に話を通し、備品の交換や補充という仕事を済ませた後、そのまま使わせてもらうコトにした。
作業を終えたマルは、そそくさとその部屋を出ようと出入口へと足を向ける。
自室に帰ろうとするマルの手を捕まえた。
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