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第10話 恋の満員電車
結局俺たちはナンパもせず、ナンパもされず、BBQもせず、銭湯みたいに人がいるぬるい海にも入らなかった(海で他にする事ってあるのか?)。
ただスマホで好きな音楽を掛けて、他愛のない話をしながら対岸から離発着する飛行機を見ていた。
何しに行ったのかよくわからないけど、いや、青春だな(棒読み)。
ヨコジマと二人でよかった。他の奴とじゃ間が持たなかったかもしれない。
何かイベントがあったのか、帰りの電車は無茶苦茶混んでいた。
いつも乗っている、2両編成後ろ乗り前降り、無人駅ばっかの通学電車とは違う。
ぎゅうぎゅう電車に詰め込まれて立っていると、ヨコジマがもぞもぞ手を動かしている。
何だ痴漢か?顔でも掻きたいのか?と思って動かせるように隙間を作ってやったら、あれ?って顔してる。
で、誰かに手を握られた。
誰か、っていうか、分かってるけどこんなとことでされると緊張する。
いや、どこでされても緊張する。
ドキドキして体が熱くなってきた。
顔も、赤くなってる気がする。
体温が上昇して手汗までかきそう。
頭もくらくらしてきた。
…ふぅ、しんどい。
「大丈夫?」
「え?何が?」
「熱あるんじゃない?」
体も顔も熱くって、ぼうっとした俺を覗き込む真顔のヨコジマ。
繋いでない方の掌で額を触り、頷いた。
「やっぱ熱あるわ、肌も真っ赤になってるから火傷っぽいし…ごめん」
なんで謝ってるのかわかんないけど、あんまり頭がまわんないから、とりあえず頷いといた。
すぐ近くの人達が、無茶苦茶混んでるのに席を譲ってくれたんで2人でお礼を言って座らせてもらった。
家では家族全員に「アホか」と言われ、ビニール袋に入れた氷水と一緒に寝かされた。
インドア派でゲーマーなのに、日焼け止めも塗らずにずっと炎天下にいたせいだ。
熱があってだるいし、氷水が冷たすぎて本当に死ぬかと思った。
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