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第11話 歴史に”もし”はないけれど
翌日朝からヨコジマがお見舞い兼看病に来てくれた。
熱は下がったけど、うちは共働きだから来てくれると心強い。
「キサキ生きてる?パピコ持ってきたよー、あとこれ、うちのにーちゃんから差し入れの弁当」
「コロッケの匂いがする!めっちゃうれしい、サンキュー」
ヨコジマのにーちゃんもいい奴だ。
玄関口でヨコジマに頭を撫でられた。ちょっときゅんとする。
細かく恋のボディーブローを仕掛けてくる奴だ。
ん??恋?
居間じゃ落ち着かないから、冷房がわりに氷水入りビニール袋を持って二階の俺の部屋に上がった。
俺はシャツを脱いでまだ炎症が引き切ってない上半身に濡れタオルをのっけて、扇風機の風を当てて冷やしている。
エアコンがないから、座卓を挟んで座っているヨコジマには、氷水入りのビニール袋を頭に乗っけて我慢してもらった。
「骨折るわ赤剥けになるわ、今年の夏は何か呪われてるのかなー」
って何も考えずに言ったら、ヨコジマがしゅんとして言った。
「ごめん、それどっちも俺のせいやな」
「えー、違う違う。お前のせいじゃない!楽しかったし、おかげで英語教えてもらえて助かった!」
あれ、急いで訂正したのに、なんだかヨコジマの表情がちょっと微妙だ。
「うん、右手使えないからせめてその位手伝えたらって思ったから…」
そうだった、そもそも骨折ったから英語教えてもらって、なぜか仲良くなって海に行っちゃったりしたんだ。
じゃあ、もし猫がヨコジマの自転車の前に飛び出してこなかったら?
そこに俺が居合わせずに骨折ってなかったら?
ヨコジマの手がすっと動いて、机に乗せていた俺の右手に重なった。
何?どんな展開なの、これ?
妹の少女漫画だと、この後キスして押し倒される系なんだけど。
俺すでに上半身裸だし、心の準備もできてないけど。
ど、ど、ど、ど、動機、息切れ、眩暈がする!!!!
てか、俺は何を期待してる?
1人でテンパっている俺にヨコジマが言った。
「キサキ…ここ、俺も落書きしていい?」
「はい?」
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