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第12話 ヨコジマのほしい物リスト
右手のギプスにはすでに終業式の時に同じクラスの奴が書いた、ファイト一発だの、「左手ばかり使ってもあたしを忘れないで」by右手(これは下ネタ)だの、全然似てないピカチューが書いてあった。
机から油性ペンを見つけ出したヨコジマは、俺から読めるように書く、と言って何かをせっせと書いている。
左手でギプスの指の方を固定し、俺と座卓の間に半身を入れてこちらに背中を見せている。
何書いてるのか知らないが、なげーよ。この距離感、緊張するし。
どのくらいたったのか分からないけど、ヨコジマが体を起こして振り向いた。
「書けた、どう、この愛の告白」
そこにはマッキーのぶっとい方で書いたヨコジマのきれいな文字があった。
≪右手が治ったら恋人繋ぎして映画をみたい≫
なんじゃそりゃーーーーーーーっ!!!
激しく脱力すると同時に何故か急にドキドキして鼻血出そうになった。しかもギプスに書くな!鼻息が荒くなる。
奴が俺の反応を待っている沈黙が重くて、何か言わねば…
「ど…どう、この告白?じゃねーよ!そもそもこれ告白か?お前の願望じゃねーか。
アマゾンのほしい物リストにでも入れとけ!」
興奮した勢いで語気が荒くなる。
ちょっとびっくりした顔のヨコジマが口を開く。
「以前俺の家でキサキに言った通り、俺はキサキが好きです。ほい、今告白したぞ」
「早っ!しかも直訳調!」
ドキドキしすぎて突っ込みが早くなる。
あ?なんかもう一つ突っ込むところがあった気がするが。
ヨコジマは俺の言葉を聞いてなかったのか、聞いてたけど無視したのか、ギプスの先から出ている俺の右手指先に自分の指を絡めて勝手に恋人繋ぎをしてこっちを見た。
これまであいつの手なんて見てなかったけど、ヨコジマのちょっと日焼けした指がギプスの先から出てる俺の細い指に絡んでいる。
触れてるとこがじんじんするんですけど。何ですか、これ?
ヨコジマの顔を見ると、目が潤んでるくせに真剣な表情だ。この間のキスを思い出しちゃって、血液が顔と下半身に流れ込んで行く!
顔は赤くなるし、息子さんは半勃ちになってくるし。
あー、もうこの人やだ。指をちょっとにぎにぎしてきたり、何がしたいの?
俺をどーしたいの?いや、俺はどーしたいの?
色々恥ずかしすぎて顔が見れない。
「英語教えたきっかけはケガだけど、キスしたのも、手繋いだのもケガさせたからじゃない」
そりゃそーだろ。
「…手、勝手に繋ぐなよ… …まだ治ってないし」
ちょっと意地悪な気分で言ったらはっとしたように返された。
「ごめん、じゃあやめる」
え?って感じでヨコジマの方を向いたら目が合った。
ん?って顔された。
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