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第三章 2

「リ」 「ごめんなさいっ」  とりあえず椅子に座って貰おうと声をかけた瞬間、いきなり頭を下げられた。 「リナ? 何謝ってんの?」 「ハルくんのこと! ほんとに全然違うんです! あの記事でたらめなんですぅ~~。他にも人いたんですよぉ~~」  この世の終わりのような顔をして必死に訴えてくる。オレはふっと小さく笑った。 「あ、うん。わかってるよ?」 「で、でもっ! あの記事が出た後、詩雨さんに会って貰えないってハルくんが」  安心させるつもりで言ったけど、リナは更に必死な顔になる。 「ごめんなさいっ。私のせいなんです。あの記事の記者と揉めたことあって~~腹いせに~~」  言っているうちに自分でも興奮してきたのか、眼に涙を溜めている。 それにしても。 (何言ってんだ、遙人のヤツ。自分だって連絡してこなかったくせにっ)  しかも、それをリナに言うなんてと、やや怒りを覚えたものの、それは顔には出さず、より優しげな表情を彼女に向けた。 「そうか。それは大変だったな。たぶん、サクラ・メディアが手をまわしたんだろうから、もう大丈夫だよ」 「詩雨さん……」  とうとうぼろっと涙が零れ落ち、 「詩雨さーん」  とオレの名を呼びながら、顔をぐっとオレの胸に押しつけてくる。びっくりして、どうしたものかと考えたが、とりあえずよしよしと頭を撫でてやる。 「ほんと、違うのっ」  胸許で泣きじゃくりながら。 「ハルくんとはそんなんじゃないんですっ。私、ハルくんより、詩雨さんのことがっ」 「んんっ?」  なんか今、爆弾宣言を聞いたような……。  リナが涙でぐしゃぐしゃにした顔を上げ、オレをじっと見る。 「私っ、詩雨さんのことが、す――」  バァァァンッ。 「リナっ!!」  思い違いでなければオレへの告白であろうリナの言葉は、ドアを激しく開ける音と、彼女の名を呼ぶ声で掻き消された。 「ハル」 「離れてっ」  ベリッと音がしそうな勢いでオレをリナから引き離し、自分の背に隠した。 「やだっハルくん、盗み聞きっ?」  リナはもう泣いてはいなかった。 「どさくさに紛れて、何やってんだ」 「ハルくんて、そんな顔して、実はめちゃめちゃ嫉妬深いよねっ。そんなんじゃ、いつか詩雨さんに嫌われるよ。あ、会っても貰えないんだから、もう嫌われてるかも~。ねっ、詩雨さんっ」  横からオレの顔を見ようとするリナの頭を、ぐっと遙人が押し退けようとする。 「うるさいっ。お前はちゃんと仕事しろっ。詩雨さんは俺を嫌ってなんかないっ」  ふたりでわあわあ言い合いを始めてしまった。 (待って……ちょっと、待って待ってっ。これってどういうこと? リナはオレとハルの関係を知ってるのか? それとも単純に友だち関係として言ってるのか??)  オレは頭を真っ白にして立ち尽くした。

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