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第四章 3
意味ありげに微笑む。
オレと遙人は顔を見合わせた。遙人の顔にやや朱みが指す。そういうオレは耳まで真っ赤だろう。
あの日──サクラ・メディア・ホールディングス主宰のパーティーのあった日。
遙人はずっとオレを好きだったと告白し、半ば強引に肉体 を開いた。
その事実だけを語れば全く酷い男なんだろうけど。そのお陰でオレの心の中で凝り固まった何かか、ぶち壊わされたんだ。
それからオレは遙人を意識するようになり……そして、今がある。
「ほんとに。いったい何があったんだか……ま、そのお陰で『ハル』の魅力は倍増、詩雨は仕事に復帰。いいことだらけだ」
夏生まで便乗する。いろいろと解っているようなことをいうので、オレの顔に益々熱が溜まる。
「ほんとっ、ハルくんムカつく。ちゃっかり詩雨さんといい仲になっちゃって」
「言えてる~。まさかこんな展開になるとは。いや、ちょっとあの時予感あったかもだけど」
リナの言葉に同意しつつ、今まで一度も口にしていないことまで、話し始める陽向。アルコールでだいぶ口が軽くなってしまっているようだ。
ちょっと肩身の狭い思いをしながら、眼の前の皿のサンドウィッを摘まむ。食べてりゃ何も答えずに済むだろうか。
「──天音。今日は飲み過ぎなんじゃないか」
「いーの、いーの。お祝いなんだから。っていうか、これが飲まずにいられる? 大事な詩雨くん完全に取られちゃったんだよ」
「おいおい」
脇からそんな会話。
ちらっと見ると、何やら桂川が甲斐甲斐しく天音の世話をしている。しかも、天音がそれを受け入れている。誰にでも人当たりがいいようで、何処か他人から一線を引いている天音にしては珍しい。
その顔にはいつもの胡散臭い笑顔もない。
「天音くん、車じゃないの? そんなに飲んじゃって」
白い顔を珍しく赤くしている天音にオレは声をかけた。
「大丈夫。運転手いるから、ほら、ここ~~」
天音くんは完全に酔っぱらったような感じで、隣の桂川の両肩をぐっと掴んだ。
「あ……そ……なんだ?」
にこっと桂川がオレに笑いかけた。
「…………」
なんだろう。この関係は。オレはふたりの間に妙な親密さを感じた。
(まさか……このふたりって……)
他の人からはただの仲の良い友人同士に見えるかも知れない。いや、実際はそれだけの可能性の方が高い。
でも──。
オレと遙人。そういった関係があるからこそ感じることなのだろうか。オレは思い浮かべてはならないことをぼんやり頭に浮かべてしまった。
(この場合……天音くんの方が……。んー。まったく想像つかない。えー? かと言って桂川さんの方が……ありえねぇー)
考えたくないことをいろいろ想像してしまいそうで、頭をぶんぶん振って叩きだした。
「詩雨さん、どうしました?」
「いや、何でもない。よし、飲むぞー」
「え?!」
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