14 / 22
第五章 1
小学生の黄菜を連れてきた姉夫婦が一番最初に腰をあげた。
それから順に引きあげて行く客人たち。
夏生の車で一緒に来たリナと陽向は、夏生が帰ると言いだしたので名残惜しげに帰って行った。
最後まで残っていた天音は桂川が引き摺るような形で連れ帰った。
女性陣と夏生が自分たちが帰る時に空いた食器を片付けてくれたので、テーブルの上はそこそこ綺麗になっていた。
「あとは明日片付けるかー。シャワー浴びて寝よ」
浴室に向かおうとして、ふらつく身体を遙人が支えてくれた。
「飲み過ぎですよ、詩雨さん。シャワー、明日にしたらどうです?」
「えー今日絶対汚れてるからこのままじゃやだ」
やっぱり酔っぱらってるのか、思いも寄らず甘ったれたしゃべり方をしてしまった。恥ずかしっと思って遙人を見ると、く~~っと眉間に拳を当てていた。
「ん?」
「やだって、なにっ。もう可愛いかぁぁ。──しょうがない、じゃあ俺が手伝いますよ」
「んん?」
酔って頭が働かない。遙人の言ったことをゆっくり頭の中で咀嚼して、やっと理解する。アルコールで朱くなっているだろう顔に一気に熱が溜まる。
「──いやっ! いいっ! ひとりで入れるからっ」
「ひとりで入ったら危ないから──何もしませんって」
オレの心を先読みする。
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと」
なにかするとか、しないとか。そういう問題だけでもない。
この数年の間にふたりで風呂に入ったのは、ほんの数回。
それ以上に恥ずかしいこともみんな晒しているというのに、どうしてか一緒に風呂に入るという行為だけはそれ以上の羞恥を感じてしまう。
遙人からは何度も誘われているがほぼ断っている。
特別な時とか遙人どうしてもオーラを放っている時には断り切れないのだが。
基本遙人はオレを大切にしてくれているので、無理強いはしない。
しかし、今日はオレのことを心配して……。
(だろ? たぶん……。や、それとも特別な日か……?)
アルコールのまわったふわふわした頭で考えている間に、なんとなく浴室まで誘導されてしまっていた。
仕方なく服を脱ぎ始めるが、身体がいうことをきかない。もたもたトレーナーを脱ごうとしている間に、遙人のほうは真っ裸 だ。
彼はそんなオレを見て、くすっと笑い、
「はい、手をあげてー」
と小さい子にでも言うように促す。連られて手を上げるとインナーごと、引っ張り上げられた。続いてデニムパンツのボタンも外される。
オレはされるがままだった。ちょっと視線を下げると、もう既に勃ちあがりかけている遙人のが眼に入り、慌てて顔を反らす。
「何もしないって、言ったじゃん」
ぼそっと零す。
「何もしませんよ? でも反応くらいはしちゃうでしょ。好きな人とお風呂に入るんだから」
ともだちにシェアしよう!