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第五章 3 *R18
「詩雨さーん。寝ちゃ駄目ですよ」
遙人が一旦ドライヤーを止めてオレを呼んだ。どうやらオレは遙人の胸に身体を預け、うとうとしていたらしい。
黒のタンクトップ越しにほどよく鍛えられた筋肉を感じる。
「あ、うん──ていうか、もういいだろ。それ」
ふたりしてヨクなってしまった後、泡もろとも、吐きだした欲望も綺麗に洗い流した。
浴室を出てすぐに寝てしまいたい程ぐったりしていたオレを、遙人は胡座をかいた自分の前に座らせ、ドライヤーを当て始めた。
こんなの自然乾燥でいいのに、髪を洗った後には決まってそうする。
「だめですよ。詩雨さんはほんと自分のことに頓着がないんだから。これからは毎日俺が乾かしてあげられますね」
そう蕩けそうに言われ、小っ恥ずかしい気持ちなり、
「忙しいくせに。毎日なんて絶対ムリだね」
つんけん言い返してしまった。
でも、本当は。
こうやって髪を乾かして貰えるのは好きだ。大きな手で優しく梳 いて貰って……。だから余計に眠くなっちゃうんだけど。
「はい。終わりましたよ」
ドライヤーを横に置き、後ろからオレの顔を覗き込んだ。
「ありがと。じゃあ、そろそろ寝ようかー」
立ち上がろうとするオレの肩は、遙人の両手で押さえつけられた。
「え? なに?」
ちゅっ。
項に音を立ててキスをされた。何だか異様に嫌な予感がする。
固まったままそう考えていると、また続けて、ちゅっちゅっと音がして、更にちゅうっと強く吸いつかれた。
「ハ……ル?」
軽く身体が騒めく。恐る恐る振り返ると、欲を帯びた瞳とぶつかった。
「ね……るよね?」
「何言ってるんです? 同居、いや同棲初日ですよ。初夜ですよ?」
「同棲言うなー。それに、初夜って。今更、なにっ」
もうここ数年の間に部屋を何度も行き来して、何度もそういうことをしている。
(今更初夜とかないわーっ)
でも同居を思った以上に喜んでくれているのかと思うと、ぽっと心が温かくなる。
が、それとこれとは話は別だ。
「オレ……眠いんだけど」
口を尖らせて言ってみたが、全く遙人の耳に届いてはいなさそうだ。いや、届いてはいるのかも知れないが、完全にスルー。
項への攻めは止まず、啄むようにキスをして、強く吸いつき、べろべろ舐めまわす。項が弱いオレはそれだけで悶えてしまう。
「ん……ぁ」
オレの反応を見て、耳朶に甘噛みしながら甘い声を注ぎ込む。オレの好きな声……。
「約束……したよね。今日シテいいって」
「し……た……したけどぉ」
あれはその場を収める為の方便だった……。
「約束、守ってくださいよ。一晩中、俺に抱かれて?」
「え……」
片手がするりとルームウェアの裾から入り込み直に肌に触れる。大きくて温かな掌の感触が気持ちいい。
ゆるりと腹を撫で上へと這い昇ってくる。指の先で乳首を摘ままれる。
「もう、気持ち良くなっちゃった? ここ、固くなってる」
「んっ」
まだ項しか愛されていないというのに、もう既に身体は期待しているかのように反応を示している。それを口にされるのがまた恥ずかしくて、余計感じてしまう。
空いている方の手も後ろから伸びてきて、ルームウェアのパンツの内 に忍び込む。その大きな手はオレの昂りを探りあて、直に触れてくる。
さっき吐き出したばかりだというのに、オレのそれはもう勃ちあがり始めていた。
そして、腰の辺りに感じる熱い塊。遙人の……。
オレは抗うのをやめ、彼の愛撫を素直に受け入れることにした。
まだ疲れや恥ずかしさもあるが、愛されたい触れられたいという気持ちもちゃんとある。
オレを望んでくれる遙人が愛おしくて、その気持ちはすぐに溢れかえって溺れてしまいそうになる。
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