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第3話
薫は、対面に座り眉間に皺を寄せてミントティーを飲んでいる彼に内心困惑していた。
まずいのだろうか。今までミントティーを淹れて不味いなんて言われたことはない。違うとしたら、わたしの説明が足りなくて考えているのだろうか。
「異世界の客か。他人の世話するのが仕事か。
お前が掃除する予定の寮はここじゃねぇ」
「すいませんでした。元の世界に戻る方法分かりますか?」
「知らねぇ」
「わたしはこれで、失礼します」
「待てよ」
「なにか?」
「行く所がねぇくせに。何処に行くんだ」
「なんとかなるかなと思いまして」
「なるわけねぇだろ。戸籍がない。分かっているだろ。今戸籍がねぇと逮捕される。獣人の国だ。
お前みたいなのはすぐ逮捕だ」
逮捕。逮捕されたら3食出るし牢屋で寒いだろうけど、雨風は防げるから良いか。
「3食出ますよね」
「お前。3食出るから捕まっていいとでも思ってるのか。悪いが3食出ねぇし、即奴隷落ちだ」
奴隷。薫には嫌な言葉だった。封じたい過去を思いださせるから。母のために尽くし続けた20年。父をずっと恨んでいた。今は恨みも痛みも何も感じなくなった。
「奴隷か」
「嫌なのか」
「そう、ですね」
「俺の愚痴を聞いてくれ。これやるよ。
副団長が俺にくれたんだ。ポンチョ。
被れば黒猫獣人に見える」
「分かりました。だけど、貴方をなんと呼べば」
「表情変わらねぇな。尋問官思い出すぜ。
俺の事は団長。そう呼べ」
まったく上から目線で自信家から、どんな愚痴が飛び出すのか、仕方ありませんから聞いてあげましょうか。
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