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第15話

 薫は困っていた。何故か右隣にジキル、左隣にジェリー。2人に挟まれて、世話を焼かれていた。 「あの。わたしは自分で取れますから皿に入れるのやめていただけますか?」 「別いいだろ。辛くて美味い鍋だな。  酒が欲しいぜ。ジェリー。持ってねぇのか」 「持っているわけないわ。はい。カオル。  ジャガイモ、ニンジン。葉物も食べなさい」 「ジェリー。そっちの魚も入れてやれ」 「肉以外をわたしの皿に入れるのですか」 「カオル。気付かないわけないわよ」 「てめぇ、肉以外食べてねぇだろ」 「そっそんなことはありません」 薫は野菜も魚も苦手だ。一緒に食卓を共にすることがない。一緒に食べればバレてしまうから。否定はするが嘘だと丸分かりである。 「そうか。食べろ。美味いから」 ジキルがわたしの皿から魚をすくい。口元に持ってきた。世に言う恋人にして欲しいランキングに入るあーんでは。ジキルにそのような意図は決してないだろう。恥ずかしいものは恥ずかしい。ジキルは顔がいい。目付きは鋭いから怖い印象を最初に持たれるだろう。顔は美形だ。ジェリーは対照的にかなりの美人。面食いならわたしのポジションはご褒美。申し訳ない。ここで断れば認める事になる弱点はなるべく伏せたい。 「いただきます」 薫は一口で全部口に入れた。厨房にあったなんの魚だか分からない魚を使ってみた。味はどうでもいい。パサパサした食感が苦手で上手に飲み込めない。無理やり飲み込んだ。 「食べられるでしょう。嫌いではない。信じていただけましたか」 ジキルとジェリーは、笑っていて頭を撫でられた。馬鹿にされているようで、薫は複雑な気持ちがした。

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