16 / 44

第16話

 薫は1人で窓の外を眺めていた。デザートの黄色くてぷるぷるしたプリンを食べていた時。 「砂糖がなかったので、蜂蜜を使いました」 説明して薫は出した。鍋は空っぽで全部食べてくれた。鍋は。嬉しかった。まるで宝物みたいで。洗って棚に戻そう。思ったけど。戻せなくてリュックに。後で新しいの買おう。 「うまっ」 「美味しいわぁ。ありがとう。カオル」 辛い食べ物も、甘い食べ物も両方好きらしい2人。食事を作るのも悩まなくてすむ。薫は自分が彼らにご飯を作ることに嫌悪を感じていないのに驚いていた。仕事をしていた頃は仕事と割り切って作っていた。全部食べてくれることは少なかった。作るのも嫌になっていた。2人に作るのは楽しい。 「カオル。風呂入るぞ」 ジキルの言葉に薫は固まった。他人と風呂。入れない。それだけは嫌だ。男同士。体を見られたくないなんて言ったら馬鹿にされる。だけど裸の付き合いは出来ない。 「すみません。お風呂だけは入れません。  2人で入ってください。片付けまだ残ってますから」 ジキルとジェリーだけでお風呂に行かせた。片付けを終えて直ぐに窓の外を見ていた。雪がまだ降り続いていた。これはかなり積もる。薫は雪で遊んだ経験がなかった。家の中から雪で遊ぶ同年代を見て、昔は羨ましいと思ったこともある。雪合戦。かまくらで餅を焼いて食べている人。みんな笑顔だった。 「馬鹿みたい。過去は過去だ」 窓も凍りつきやがて、外は見えなくなった。薫も2人が使えるように、1階にある部屋の掃除を始めた。

ともだちにシェアしよう!