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第26話

男は牢屋から出た。看守がいない隙を見計らい、鉄格子を力いっぱい左右に引き、人1人通れるぐらいの入り口を作った。男は力だけは自信があった。力だけでどんなことも乗り越えてきた男。今回も乗り切れる自信があった。自信しかなかった。外に出た男は、すぐに階段を見つけ上に上がる。そこにはまた牢屋。鞭に打たれる罪人。また階段を見つける上がるが、また周りは牢屋。今度は水責めをうける罪人。牢屋。拷問が変わるだけで牢屋は変わらない。上に上がっている感じがなくなってくる。 「上には上がってるんだろ」 「思うにゃ。違うのにゃ。拷問が変わるだけ。実際には牢屋の階から出ていないにゃ」 「階段はどう説明するのよ」 「ジェリーさん。面白いとこはそこ。  階段は幻術で作られていて、登っているように、錯覚をさせらているらしい。聞いただけにゃから詳しくは知らない。実際は部屋が動いていて。動きに規則性はない。ともかく横やら下やらに移動はするが上にだけはいかない。その階にしかいられない。2階に落ちたものは2階から出られない。階同士がぶつからないよう移動してる。 神のご意志と言われている。難攻不落の神殿にゃ」 「出た奴はいるのか」 「聞いたことがない。ジキルがそれほどまで入れ込むか謎にゃ。ジェリーも何故にゃ」 「オレは感謝してるのよ。あの子に。幸せしてあげたいの。団長もそうでしょ」 「俺はただ」 ジキルはカオルのことを何も知らない。あいつの事を知りたかった。たった2日一緒にいただけ。理由は分からねぇ。だけど気になって仕方がなかった。カオルの体の傷以上に心の傷を話して欲しい。楽になってもらいてぇ。 「ただ何よ」 「別に俺は仲間が連れ去られたから、助けたいだけだ。カオルは俺の大切な奴だ」 ジキルの言葉に何故かジェリーとスノーが顔を見合わせ驚きの表情を浮かべていた。 「それってカオルが好きなの。  恋愛の意味で。団長に春がきたわ」 「興味深い。俄然会ってみたい」 「ジェリー、スノー。勘違いするんじゃねぇ。恋愛の意味で好きにはならねぇよ」 俺は誰であろうと恋愛はしない。ジキルは決めているのだ。

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