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第37話

花の茎は薫のいる場所にも伸びてきていた。そのせいでリーブとよく分からない彼と分断されてしまった。 「シロ。勝手に出て来てわたし以外に見えないのならご報告をしてください」 「ごめん。つい」 申し訳なさそうな顔をしたシロに、薫はそれ以上何も言えなかった。 「これ、どうゆうことなんでしょう」 「分からないな。見たことある花」 「そうですか。花から感情が溢れてきて、気持ちが悪い」 「気持ち?どんな」 「ドス黒い気持ち悪い感情。でも、放って置けない。どうしたら良いか分からない」 「感情を辿れば、見つかるかもしれない。  大切な鍵が」 シロが何を言っているのか分からない。鍵。シロは何度もその言葉を口にした。理由が分からない。鍵がなんなのかはきっと教えてくれないのだろう。薫は気持ちだけだが、泣きたくなってきた。なんで自分がこんな目に遭っているのだろう。考えることなんてまったくなかったのに。流れてくる感情に引っ張られているのかもしれない。 「いやだ。帰りたい。両親も友人もいないけど。  わたしには全部関係ないではないですか」 全部。無くなればいい。綺麗に。わたしには掃除、洗濯、料理以外になんの取り柄もない。身分証登録に来ただけなのに。どうしてこんな事になってしまった。 「カオル。まずい」 シロの声が聞こえた気がした。どうでも良かった。1番大嫌いな男の声が聞こえた。 「カオル。自分を見失うな。今、見えているものがあるはずだ。おまえは私の」 「うるさい。わたしの前に。貴方は誰ですか」 周りは真っ白になっていて、目の前には美男美女がいた。意味が分からない。この世界は本当になんなのだろう。わたしに何をさせたいのか。薫は今すぐこの場から消えたかった。

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