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第40話
薫は分からなかった。彼が抱く憧れる気持ちも。人のために自ら魂ごと居なくなろうとしているのか。
「わたしは。わたしは貴方が分かりません」
「わからない。どこが」
神官長にならなかったのは、自分の意思。戦う気は無いのに、相手のことは調べない。面倒なことをわたしはしない。分からないのはそこじゃない。
「何故貴方が責任をとるのですか?
関係ないではないですか。貴方の人生に」
「つめたいっていわれない」
「つめたい?よく分かりません。
貴方になんの関係があるのですか?
所詮他人ではないですか。死んだら終わりだ。
死んでまで貴方が責任をとる必要はない。
わたしは思います。わたしは誰かの為になんて、もう2度とごめんです」
母のために生きてきた日々。誰かのためなんてもう2度とごめんだ。
「ワタシのために、おおぜいがしんだ。
そんなふうに。おもえない」
「そうですか。それでも貴方が責任をとる意味が分からない。死んだから。他人に骨を埋葬してもらい。自分は無念を背負い消える。彼ら、彼女は死んだ。事実は変わることはない」
「黙れ。ワタシ達の無念がおまえに分かってたまるか」
「やっとですか」
薫には、彼の気持ちは分からないし分かりたくもない。わざと片言で言葉を切ったような話し方をしているのは分かっていた。わざと煽ったのだ。彼が激昂するように。本音を言えるように。
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