41 / 44
第41話
「わざとか」
「はい。わたしも言いたい事を言えませんでした。父親に」
怒りで何も見えなくて何も言えなかった。ただ目の前からあの人が消えればいい。それだけだった。何も言えなかった。
「貴方の本音は、背負って消えることなんですか。違うはず、わたしが決めつける事ではありませんけど。復讐しなくていいのですか?」
(復讐しましょ)
この声は誰だ。彼でもわたしでもない。声音からして女性だ。
(わたしも協力するわ)
「植物から声が。花の噂は本当だった」
花の噂。薫にはまったく分からない。どうゆう意味だろう。花言葉とかこっちの花。後で調べてみよう。
(くず。呪って懲らしめたら、わたしも成仏出来るわ)
植物から明確な形をもった幽霊が出てきた。正直怖い。長い髪がだらんと顔にかかり、顔色が真っ青で古くさいドレス。元が何色かも分からない。
「とりあえず。身だしなみを整えましょうか。
お嬢さん」
(幽霊に向かっていい度胸。具合悪そうね。
復讐も出来ないわ。眠りなさい)
突然、目と鼻の先に彼女が現れたと思ったら薫の目を自身の右手で隠した。強烈な香りが花を支配した。気持ち悪くなるような匂いではない。むしろ騒めいていた心が落ち着き、体の力が抜ける。薫は眠るつもりはなかったのに、気絶するように眠ってしまった。
ともだちにシェアしよう!